3年前からその存在を知りながら、なかなか行くこととができず、今年やっと! 聞きに行くことができたヴィオラ・スペース名古屋。今井信子さん始め、ヴィオラ奏者の大御所の音を生で聞くことができた。
今年のテーマは英国であります。
主な演奏曲は
ベンジャミン:ヴィオラソナタより第1、3楽章(演奏 百武由紀氏)
ヴォーン・ウィリアムズ:「グリーンスリーブス」による幻想曲(演奏 今井信子氏)
ブリテン:ラクリメ~ダウランドの投影(同上)
クラーク:ヴィオラソナタ(演奏 アントワン・タメスティ氏)
など、びよら好きとしては、実においしいラインナップ。
そうそう、英国特集といいつつ、フォーレの小品が入っていたのが心憎い。
「ちゃんとしたびおらの音を聞いてみたい」と言ってついてきた娘さん(本当は中学生の時にユーリ・バシュメット氏の演奏を生で聞いているはずなのだが)いわく「びおらは歌う楽器なんだねぇ」。
ええそうですとも(ふだん、ハハが良い例を聞かせてないだけで)。より正確に言うなら、歌うのが得意な楽器。
ヴィオリストがソロで弾く場合、バイオリンと比べると速弾きは少なく、弓をゆっくり目に使い、まるで弦に吸い付いているかのような動かし方をする。びおらは鳴らそうと努力しなければ鳴らない楽器だけども、そこを頑張ると深みと広がりのある音が出てくるし、その音色は人が歌っているように聞こえる。
歌うのが得意な一方で、やや渋めの音色は、現代曲ととても相性が良い。
たとえば、ブリテンの「ラクリメ」。16世紀の作曲家ジョン・ダウランドのリュート歌曲に基づく変奏曲。もとから大好きな曲だが、これが今井信子氏の演奏で生で聞けたのが嬉しい。全体的に繊細な感じがしつつも、盛り上がるとこめでは生々しい人の声のような音が聞こえて、心にしみる。
パワフルで押しの強い音を奏でる百武氏はベンジャミンのヴィオラソナタを演奏したが、これはこれで力強い渋い音が味わえて良かった。
タメスティ氏は他のお二方に比べると硬質な音色で、クラークのヴィオラソナタを。ひたすら切れ味よくカッコ良かった。感情を乗せながらも甘さひかえ目な音色がやはり良い。この曲に限らず、タメスティ氏の鳴らすPPは極上の薄物のような音で、「うわ、こんなに色気のあるピアニッシモ初めて」と感激していたら、氏の楽器は1672年製ストラディバリだと知った。音質もさることながら、今から350年近く前に作られた楽器が現役バリバリで活躍していることの凄さに驚く。
最後に、個人的に一番「うぉー」と唸ったのがピアノ伴奏の迫力。ヴィオラで歌い残してしまった感情を代弁するかのように、時に激しく時に自由に、ソリストの呼吸を読みながら歌ってみせたところは本当に素晴らしかった。
よい音をたっぷり吸収したので、明日から歌うように弾けてたりするといいんだけどなぁ。「聞くだけ練習法」(違)
PR
COMMENT