最近、イヌのことをあまり書かなくなった。というのはお互い慣れてきて特に大きな事件らしい事件もなく過ぎてきてるからで、これはいいことなのだろう。イヌとしても、食っちゃ寝るの老犬ライフを満喫しているように見える。
お互い顔を見ればだいたい言いたいことはわかるし、何を好んで何を嫌がるかもすっかり手の内。老い先短いイヌなので、とくに厳しくしつけもせず、気ままに過ごさせていたら、食事のたびにおねだりをするわ、散歩も連れてゆく人間を指定するようになるわで、すっかり態度がでかくなってしまった。いや、最初から人間を良くて対等にしか思わないイヌだ。
で、散歩の相手に指定されたのは、一番イヌを可愛がっていないはずの自分だった。子どもたち、特に娘はとてもイヌを気に入っていて毎日抱っこしてはいじくりまわしているのだが、彼女がいくら引っ張っり出そうとしても、イヌは頑として外に出ようとすらしない。息子は言わずもがな。ダンナも毎日イヌ相手に遊んでいるが、彼はフンの始末ができないので、散歩は端から想定外。
散歩担当者になったのはいいが、最近は忙しくてなかなか昼間に散歩に出られないので、仕事から帰ってきたあと、ほとんど夜中といってもいいくらいの時間に出る。それで気づいたのが、昼間の散歩は面倒くささが先に立つが、夜ならむしろ進んで歩きまわりたい気分になるということ。気候がいいせいもあるが、自分の性分も関係している気がする。実際、ジョギングも夜でないとやる気にならないし。
誰もいない暗くて静かな田舎道をとぼとぼ歩くと、仕事のせいで高ぶっていた神経がすーっと収まるし、ぼんやり考え事もできる。それでふっと空を見上げると、黒々とした裏山の影がせまってきたり、その上に星々が輝いているのが見えたりするのがとてもいい。昼間は遠くに感じていた自然の力がぐっと近づいてきて、人間の邪気を追い払ってくれる感じ。
ただし気をつけないとトノサマガエルを蹴飛ばしたり、蛇と遭遇することもないわけじゃない。夜は基本的に人間以外の生き物が活発に動く時間だから。
思い返してみると、子どものころから夜道が好きだった。習い事の帰りはたいてい夜の9時頃で、車でのお迎えなどない時代だったので、いつもてくてく歩いて帰っていた。人家の明かり、星の明かり、用水路の水音など、鮮明に覚えている。図工の時間に描く絵の題材にもした。静かだけど、家々の間からもれてくる生活の気配漂う道が好きだった。人の姿はないけど、気配だけが満ちている、というのがミソ。人間の気は濃い、というか生々しいから、ワンクッションあるほうがいいのよねぇ。
日の当たる道は歩きやすいし快適には違いないけど、自分の場合は夜側の性質を持って生まれたんだろうとよく感じる。なにしろ「オバケ」だし(笑) 実はイヌも夜のほうが元気がいい。
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