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びおら弾きの微妙にズレた日々

1杯2000円なり

家人が平日に休みをとったので、放っておく訳にもいかず、ランチを食べに出る。

街中へ車を走らせて、たどりついたのがインド料理店。10年ぐらい前に一度入った店だったが、あのころに比べてまわりがすっかり寂れてしまった。平日の昼間なので、入ってくるのはスーツ姿のオジサンがほとんど。たまにOLさん。私たちもどう見られていたのか、レジで財布を取り出したら「お会計は別々ですか?」なんて聞かれたりして、あの、財布はひとつですから、と心の中でつぶやいた。それとも奥さんが支払い係という家は多くないのか?
その後、大須をぶらぶらするが、なにしろ水曜日はコメ兵を始め、定休日の店が多い。静かなものだ。特に買い物はせず、さきほどのインド料理店で出された巨大ナンの消化をよくするため、コーヒー専門店に入った。タンス専門店が並ぶ通りにある、入り口が黒くて渋いデザインの店。(あえて名前は出しません)

この店、わざわざ表のメニュー表に「お子様向けのドリンクは用意してございません。店内では携帯電話・パソコンの使用はご遠慮願います。会話はヒソヒソ声でお願いします」などと明記してあるので、相当敷居の高い店だと思って、これまで敬遠していたのだが、今日は夫婦二人ということもあって足を踏み入れてみた。

店内はまるでバーのようだった。照明は思い切り暗く、手元だけスポットライトが当たって明るく見えるようになっている。一つ一つの席に、赤いバラ(たぶんプリザーブドフラワー)が1輪ずつ飾ってある。私たちのほかにお客さんはいない。ごく小さな音量でジャズが鳴っている。カウンターの中にはバーテン、じゃなかった、店主とお手伝いの女の子がひとり。

手渡されたメニューをめくる。コーヒーの種類ごとにこだわりの解説がついてた。お値段¥2000なり。
ええ、1杯で2000円ですとも。

ぎょっとしてメニューをめくってゆくと、三桁の値段のコーヒーもちゃんとあってほっと息をついたが、それにしてもランチの値段と同じかそれより高い。こんなに贅沢なコーヒーは年に一度にしようと心に決めて、高級コーヒーを注文する。私は確かモカ・マタリ。相方のは忘れた。でも香りは覚えている。モカ・マタリより香ばしくてクセがなく、非常にすっきりしていた。

そして、注文すると、すぐに豆を挽いてくれて、挽きたての豆の香りをかがせてもらえる。しかも粉の量は通常の二倍。それを目の前でドリップしてくれるのね。丁寧さを演出しながら。値段の中には見物料も入っているはず。

味は……そりゃいいに決まってる。ワインじゃないけど、何種類かの香りが絶妙に混じり合っていい感じ。うん、コーヒーとは本来香りを味わう飲み物だ。試しに1/3飲んだところでクリームを入れ、さらに残り1/3になったところで砂糖も追加してみた。するとどんどん繊細な香りが飛んで普通のコーヒーの味になってゆく。高級なコーヒーほどブラック最強。

飲み終わってしまうと、いつもならすぐに席を立つ相方がくつろぎ始めた。この手の店はゆっくりしてゆくものだと言って。要するに値段のうち、場所代が半分くらい入っているのだからゆっくりしていくべきだと考えているらしい。
彼の言いたいことはよくわかる。でも、私はくつろげない。となりに人がいると考え事もできないし、かといって、しゃべるのも気が引ける。というか、いつも家で顔をつきあわせているのだから、あらためて話すこともない。おまけに店の中が静かすぎ&暗すぎる。バーなら全然問題ないが、なにしろコーヒーなのだ。個人的なこだわりであることを承知で書くが、コーヒーを楽しむなら明るくてそこそこ静かな場所がいい。何なら雑踏の中の孤独でもいい。とにかく外とのつながりをかすかに感じていられる場所がいい。

ということで、ほぼ強制的に相方を引っ張り出して出てきた。店主は出口でお見送りをしてくれた。もちろん私は微笑んで応えた。落ち着いた空間で人をもてなしたいというその心意気は、充分に伝わったので。もし次に行くとするなら……本当に一年後?

家に帰り、夕食後にコーヒーをわかして飲んだ。娘の分もふくめて三人分必要だったので、マシンに頼った。豆は生協で頼んだもので、決して高価ではない。美味しかった。

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