忍者ブログ

びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「リアル」って言われても

愛知県美術館にて、「あなたのリアル、わたしのリアル」展を見てきた。これは県美術館所蔵の作品を、「リアリズム」という観点で分類し展示したもの。写実主義あり、シュルレアリスムあり、スーパーリアリズムありで、芸術家がいかに「現実」を捉え表現したか、さまざまなあり方を紹介した形になってる。

現実にある風景を美化せずありのままに描いた字義通りの「リアリズム」、現実にはありえない風景を書くことで人の心に潜む「現実」を引き出そうとした「シュルレアリスム」、写真に対抗するかのような「スーパーリアリズム」、そのほか現実に存在する物体を表現空間に持ち込み、そこに生まれる違和感を表現してみせる作品があったり、「現実」との対峙のしかたにもいろいろある。

皮肉なもので、どんなに実物らしく描かれたモノでも、ひとたびキャンバスの中に置かれれば(あるいは作品として一定の空間に閉じ込められてしまうと)、それはモノ以外の意味を帯びた何かになってしまう。「現実」とは、あくまでも個人的体験なんだなあというのが、よくわかる。

個人的に気に入ったのは、遊園地特有の虚無感が見て取れる、松樹路人《去りゆく夏に》、巨大な無人のホール風な空間が印象的な杉戸洋《the Rainbow Wall》、物思いにふける若い女の子の姿がリアルすぎて「あるある体験」を引き起こしそうな三尾公三《Palm Beach 昼下がり》。この三作品に共通するのは、永遠にやってこない主役をいつまでも待っているかのような、茫漠としたとらえどころのない寂しさ。寂しさや空虚感も、人の感覚してはとてもリアルなもの。

別室に舟越桂の彫刻作品も6点展示されていたのだが、非常に良くて、茫漠とした雰囲気はこれらの作品にも共通していたように感じた。いずれも、着色された木彫の上半身像で、視線はどこか遠いところに向けられており、独特の存在感がある。
これがたとえばブロンズの裸婦像だと、人間の身体的側面が強調されて、見る度に重たい印象を受け止めなくてはならないが、船越作品は柔らかい風合いの木彫でしかも色がついているためか、重量感は半分に減り、身体性よりも精神的な内面が強調されて伝わってくる。そこに佇んでいる人びと(あるいはスフィンクス)はどんな思いを木の身体に詰め込んでいるのか。見るほどに想像力を刺激されて、じわじわくる。


芸術作品の面白いところは、作家それぞれが持つ「リアル」を追体験できるところなんだな。

PR

COMMENT

NAME
TITLE
MAIL(非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS(コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます

今月のつぶやき

ネタは切れてからが勝負です

☆CONTACT
→ littleghost703@gmail.com
※@を半角にしてください
☆Twitter→@O_bake
☆読書記録は別ブログO-bakeと読書とひとりごとでつけてます。そちらもよろしく。

ブログ内検索

アクセス解析

過去記事紹介

過去記事紹介・たまに読書ブログへとびます
過去記事紹介・たまに読書ブログへとびます

Copyright ©  -- びおら弾きの微妙にズレた日々(再) --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]