先月の真ん中ぐらいのこと、初めてヤマザキマザック美術館に足を踏み入れ、「ポール・デルヴォーとベルギー近代絵画」展を見てきた。
古代ギリシャの幻想と現代が重なる不思議なデルヴォーの絵画も良かったが、それ以上にヤマザキマザック美術館の常設展がツボにハマりすぎて、帰ってきてからもなかなか興奮が消えないほどだった。なぜ今まで足を運ばなかったのか、もったいない。
ポール・デルヴォーの名前は、恥ずかしながらこの展覧会のポスターを見るまではまったく知らなかった。
20世紀前半に活躍した、シュールレアリスム系の画家だということで、アンソールやキリコ、マグリットといった画家の影響を受けている。キリコもマグリットも知っていて、どうしてこれまでデルヴォーを知らなかったのかますます残念。確かに画風は似ているのだ。
今回の展示は、ペリエ邸の室内を飾った壁画が中心。古代ギリシャの一角にペリエ邸があるような錯覚を起こさせる、非常に面白い作品。なんだろう、品があってなお、微妙にズレのあるおかしな世界なのだ。たとえば、チラシに掲載されている「二人の女」という作品。ぱっと見ると、優美に着飾ったご婦人がふたり、お出かけですか? という状況に見えるけれど、よく見れば手前の白いご婦人は古代ギリシャの装いで、奥の黒いご婦人は近代の黒ドレス。仮装大会でもなければありえないのに、ふたりとも当たり前のような顔をして手を前方に差し出しながら(←これも意味不明)歩いている。
その他にはシュールで時に風刺のまじるリトグラフ作品。ああ、20世紀の人だなと思う。
さて、常設展示は。
まずはロココ美術の展示。豪華な布張りの壁の部屋に、華麗な絵画作品が並ぶ。肖像画、牧歌的な村人、美の女神などなど。これだけでも十分目の保養になるのに、さらにはアール・ヌーヴォー時代の家具、エミール・ガレのガラス作品まで。家具は実際に使われていた当時の空気が伝わるよう、居間や食堂など、部屋ごとにきちんとセットされている。
あとは日頃の行いがよかったのか(冗談もほどほどに)、ディスクオルゴールの実演現場に立ち会うことができた。
オルゴールはもうね、何年も前から上質な木のオルゴールを見て回りたいと思っていて、その中でもディスクオルゴールはオルゴールの巨人なので、ぜひともよい状態の演奏を聞きたいと思っていたのだ。しかも学芸員さんの解説付きで2倍美味しい。
大きな共鳴箱にひびくオルゴールの音色は澄んでいながらも深く豊か。実は共鳴箱の材料はバイオリンなど弦楽器の材料と同じだとか。
ほんと、美しいモノは正義です。リピーターになりそうです。
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