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びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

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デュフィ展



本日は始まったばかりのデュフィ展へ。

ラウル・デュフィは、20世紀前半に活躍したフランスの画家。音楽家で言うとラヴェルと同世代で、ドビュッシーは15歳ばかり年上になる。
日本ではあまりメジャーではないが、セザンヌやマティス、ピカソやゴーギャンなど当時流行していた様々な画家や流派から影響を受けつつ、そのどれにも染まり切らずに独自のスタイルを築き上げた。この、社交好きだけど決して自分を失わない性分がいかにもフランス人。というか、パリジャン(実際はル・アーヴル生まれだけど)。



油彩はもちろん、版画やテキスタイルデザイン、陶芸、水彩画などさまざまな手法に手を染めながら自分のスタイルを作り上げてゆくさまは、10歳年下のシャガールとも似ていて興味深い。
陶芸やテキスタイルに芸術家を起用する流れは19世紀後半には始まっていたのだけど、それは伝統工芸に新風を吹き込むだけでなく、芸術家にとっても様々な素材で表現の可能性を探るよい機会だっただろう。
実際に、ディフィがデザインしたファブリックの前に立ち、こんなソファカバーやカーテン、ベッドカバーがあったら、ずいぶん洒落た部屋になるだろうなあと妄想する。もしもおみやげコーナーに水夫柄のクッションカバーがあったら買ってたと思う。

ディフィの特徴は、明るい色使い、輪郭線と色面をわざとずらす技法、流れるような輪郭線。
中でも特に面白いと思ったのは、必要に応じて、それまでに習得した技法を使い分けているところ。同じ絵の中でも一部分はあえて(セザンヌのように)筆跡を残す技法で、ほかの部分は(ゴーギャンのように)平塗りで。あるいは競馬場を描いた絵の中で、人物はまるで記号のようにシンプルな輪郭線で描かれている一方、馬はしっかり肉付けされている。雑に描いているようで実はしっかりモノの姿形をとらえ、全体のバランスを計算した上で筆を走らせているのだろう。

圧巻はチラシやポスターを飾っている「馬に乗ったケスラー一家」と1937年のパリ万博に出品された壁画「電気の精」。壁画はのちにデュフィ自身がリトグラフによるレプリカを作成しているので、そちらの展示。
ケスラー一家の肖像画は、間近で見れば見るほど、色使いとか家族それぞれの特徴を掴んだ輪郭線とか、それはもう見事で、もし十分な財産と地位があったなら、こういう肖像画はぜひ欲しくなるだろうと思った。
「電気の精」は科学技術の歴史を振り返りつつ、ギリシャから近代に至るまでの科学者108名を登場させたスケールの大きな作品。じっくり追ってゆくと、連綿と続く人類の知恵の積み重ねに自然と胸熱になる。と同時に、第二次世界大戦直前のこの時代は、まだ科学の進歩と人類の進化が一致すると純粋に信じられていたことを思い、のちの原子力による悲劇を思い起こし、やはり胸がヒリヒリした。原子力爆弾と原子力発電が開発されたのは、パリ万博のすぐ後のことだ。

明るい色使いが多いといいながら、デュフィはまた「黒い貨物船」シリーズなど黒の色使いにも挑戦している。ただし、黒=闇ではなく、黒を光に反転させようとする試みが独自。この発想の転換は、一世代前のフランスの画家、オディロン・ルドンが無彩色から極彩色の世界に反転したことを思い出させる。
ルドンは何者にも染まらず夢の世界を描き続けた孤高の画家で、デュフィは様々な芸術家と交わりながらも自分の色を持ち続けた画家だというのも面白い対比だな。
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