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びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

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ミュシャはいいぞ

アルフォンス・ミュシャといえば、アール・ヌーヴォー様式で有名な画家であり、昨年、国立新美術館で「スラブ叙事詩」が展示されたことが記憶に新しいが、あいにく見に行く機会に恵まれず、心のなかでひそかに「ぐぎぎぎぎ……」と唸っていた。
それが今年になって、内容は違うものの、新たにミュシャ展が名古屋で開かれていると知り、時間を作って見に行ってきた。非常に寒い日で、外出が億劫なほどだったが、思い切って出かけてよかった。





会場となった松坂屋美術館は、松坂屋南館の7階。久しぶりにデパートという建物の中に入った。老舗だけあって接客レベルは高く、まるで自分がどこぞのマダムになったかのような気持ちにさせてくれる。平日だったので、人は少なくゆっくり好きなペースで見ることができた。

この展覧会は「運命の女たち」という副題がついており、作品はミュシャと同郷の収集家、チマル博士のコレクションより提供されている。幼なじみや初恋の相手、画家として活躍するチャンスを与えてくれた女性、恋人、生涯の伴侶となる相手などを紹介しつつ、彼女たちをモデルにした(と言われている)作品を軸に展示構成されている。

大作は少ないが、有名なサラ・ベルナールのポスター、物語の挿絵、コマーシャル用のポスターやカレンダー類がたっぷり展示されていて、とても興味深く楽しめた。いや、眼福を感じながら鑑賞したというべきかも。

植物をモチーフとしアラベスク模様を連想させる幾何学模様、華やかでときに民族衣装を思わせる装飾品、女性像の細かな表情などなど、びっしり描きこまれていてどれだけ見ていても見飽きない。ポスターなど販促用品のデザインは、使い捨て前提で制作されるものだと思うが、ミュシャのデザイン作品は何であれ、とても使い捨てなどできない豪華さ。当時の人々も同じように感じたのか、人気の高いデザインはカレンダーになったりポスターになったり、あるいは他の作品に転用されたりと、しっかり使いまわされていたようだ。特に何がすごいって、装飾と写実性が見事に融合して同居しているところだ。

もともとアール・ヌーヴォー運動そのものが芸術と実用の融合を目指していたこともあり、ミュシャが活躍した1900年前後は、芸術品のような装飾品が数多く現れた。それを牽引した一人がミュシャであることは間違いない。そして装飾性を支えたのがデッサン力。当たり前かもしれないが、確かなデッサン力を持つことはもちろん、作品制作にあたってミュシャは、かならず参考資料を用意し、取材に出かけたり、モデルを写真に撮って何度もあとで見返せるようにしていた。細部まで誤魔化さず実物をモデルにしている。だからこそ、どれだけ見ても見飽きない高クオリティの作品が生まれたのだろう。

作品の傾向としては装飾系と写実系にわけられるミュシャだが、もう一つの分け方として、フランス系vsスラブ系という軸もある。豊潤で艶めかしいフランス系と、民族衣装に身を包み、きりっとした表情のスラブ系。ミュシャは長年パリで活動していた一方でスラブ人としての自覚が強かったようだが、どちらか一方が本質的というわけではなく、両方ともミュシャらしさをよく表している。人間は結構多面的なのだ。ミュシャの中には、それまで深くかかわってきた何人もの女性が住んでいるのだから。

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