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びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

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天才に秘密なんてあるわけがない

お正月三日から開催されている「ピカソ、天才の秘密」展を見てきた。
少年期から「バラ色の時代」までの作品が中心に展示されている。
まとめから先に書いてしまうと、「天才に秘密などない、生まれつき天才としか言いようがない」。




言葉を覚えるより先に絵を書いたというピカソ。少年時代の作品はどれも驚くばかりの完成度。実際、身の回りを見渡すと、たまにいるんです、小学生の頃からものの形を捉えて紙の上に再現するのが異様にうまい人。ピカソはそういった人たちの中でも群を抜いて上手くて、さらに線の表現力が素晴らしい。デッサンやクロッキーが多く展示されていたが、ほんの数本のラインで、描かれたモデルの外見ばかりか、人となりまで伝わってくる。観察力と描画力、どちらもずば抜けてる。天与の描画力と、人や身の回りのものごとをきちんと見ることのできる目。この二つが合体すれば、そりゃ天才が生まれるというもの。

もちろん、描画の才能を持つ人たちが全員絵の道に進めるわけではなく、ピカソ少年は、父が美術教師だったという点もラッキーだった。反対されるどころか、進んで美術学校に入れてもらえたのだから。学校を出た後も自由にスペインとフランスを行ったり来たり。
彼の絵がまっすぐに対象物を捉えており、悲哀はあっても屈折したり拗ねたところがないのは、育ちのせいもあるのかもしれない。青の時代には、サーカスの芸人や貧しい人々などがよくモチーフとして取り上げられているが、彼らの姿を赤裸々に描いて見せながら、彼らを見る視線にぬくもりを感じる。同情ではなく共感。家族や母子を扱った作品が多く、〈貧しき食事〉に代表されるように、彼らの姿の奥に人生の本質=慎ましやかな愛が見える。

ピカソは線の力がすごいだけでなく、色のぬりかた、すなわち「面」の扱い方も面白い。デッサンを見ると白黒だけで立体的な奥行きが完璧に出ているのがわかるし、「青の時代」に見られるように、同系色の色しか使っていないのに表情豊かな絵が生まれる。その気になれば繊細な色付けをすることもできるのに、あえて大胆な塗り方をしている絵が多いのは、アカデミズムへの反逆だろうか。

チラシやチケットを飾る〈扇子を持つ女〉がやはり圧倒的な存在感を放っていたが、これは、バリでのパトロンだったガートルード・スタイン女史のために描かれたものだという。色々納得。スタイン女史はサロンを開いて前衛的な芸術家たちの交流の場を提供しただけでなく、作家でもあって、言葉を使ったキュビズムを目指していた、基本的には人生や生命の根源となるものを書き表したかった。英語で言えば「LIFE」そのものをまるっと差し出したかったのだ。このピカソの作品を見ていると、スタイン女史の目指した表現が見事に実現されているように感じる。

そして天才は次のステップへ進まなくてはいけない。ものごとをありのままに描写する先にあるもの。それがキュビズムだったのだろう。
面白いことに、これまでピカソの描いたキュビズム作品を見て解説を読んでもピンとこなかったのが、今回の展示を見て、腑に落ちるものがあった。初期の作品らずっと見てきて、ようやく分解→再構成の必然性がわかった気がする。


作品リストの内側にある鑑賞ガイドが、なんとすごろく!
「洗礼名が長すぎて覚えられない・一回休み」がツボる。
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