今年夏休み最後のお楽しみとして、先週足を運んだばかりの愛知芸術文化センターまで、今度は娘を連れて、冨田勲「イーハトーブ交響曲」の名古屋公演を聞いてきた。(詳細はこちら→
★)
宮沢賢治の世界を音楽として再現、その中で初音ミクが「バーチャルシンガー」として起用されているため話題になった曲だ。
初演は2012年11月。その後NHKで取り上げられたりしたので、その存在を知っている人は多いのではないだろうか。
しかし、交響曲は生で鑑賞してなんぼである。ありがたいことに再演決定で名古屋公演もある。チケットは先行販売の情報を掴んでいち早く入手。(もっとも、当日券が出ていたけどね)
関係ないけど、トリエンナーレの作品
ヤノベケンジ「サン・チャイルド」
実物は怪獣と戦えるレベルの大きさです
三階席から見た舞台。
拡大しても見づらいのですが、コントラバスの向こうに
ミクちゃんを操作するための機材席があります。
初めて足を踏み入れた大ホールは、確かに席数は多いけれど、ロビーやビュッフェの雰囲気はコンサートホールの方が広いしいい感じ。とにかく階段が多くて移動が面倒。
三階席からの眺めや音の聞こえ方は決して悪くない。が、スピーカーを通した音(たとえばミクの歌声)に少々難ありだったかも。
普通のクラシックコンサートと比べると、客層はファミリーや若い子たちが目立つものの、思ったより年配の方々が多い。たぶんチケットが高いためと(S席9500円、A席8500円)、「冨田勲」というキーワードで引っかかるのが五十代以上の人たちだからだと思われる。
いずれにしても、クラシックのコンサートに慣れている客層とは違うので、このコンサートでは指揮者の大友直人氏が自らマイクを持って曲の説明をした。
そしてサプライズ。作曲者である冨田勲氏が舞台上に現れたのだ。
大友氏がインタビューする形で冨田氏のトークが始まる。御年81歳というが、声や話し方はしっかりしている。まあ、80歳でシンフォニーを作ってしまうのだから(大友氏の言葉にもあったが、たいていの作曲家は60代過ぎるともうシンフォニーは書かない。というか書けない)、相当なバイタリティの持ち主であることには違いない。ジャングル大帝のテーマを作曲した時の手塚治虫氏とのやりとりや宮沢賢治を素材にした曲を作ろうと思い立ったきっかけなど、貴重な話を聞くことでできて、これで高いチケット代のもとがとれたと思った。
前半は、新日本紀行や大河ドラマのテーマ曲など、代表曲をいくつか。そして休憩のあと、いよいよイーハトーブが始まる。
最初は「銀河鉄道の夜」に出てくる星めぐりの歌。実はこれ、賢治自身の手でメロディも作られていて、それは、「新編 銀河鉄道の夜」 (新潮文庫) に楽譜がのっている。これが児童合唱団によって実際に歌として歌われると、それはそれは不思議な響きがあって、それで賢治ワールドの入り口に立つことができる。
2曲めで、合唱団の後ろに設置されたモニターの中にミクちゃん登場。可愛い。オーケストラとぴったり息の合った歌と踊り。
ただ、残念なことに彼女の歌う歌詞の大半が聞き取れない。音域が高すぎて言葉がつぶれてしまったように感じるときもあったし、ホールの残響が大きすぎて言葉がはっきり聞き取れないときもあったし、残念。
ミクちゃんの件は別においといて、賢治ワールドと音楽は実に相性がよい。「風の又三郎」にしても「雨ニモ負ケズ」にしても、歌になることで言葉の世界がいっそう豊かに広がる。
アンコールもまた、ちょっとしたサプライズで、幼いころ手塚アニメを見て育った世代としてはとても嬉しかったのだ。
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