ここ数日、資料と称して和楽器の本を読み漁っている。もともとは日本古来の笛を調べるはずが、いつの間にか対象が広がっていた。どんな楽器にしろ、実際に演奏される場合、それ単体で演奏されることは少ないはずだから(例えば、唄の伴奏、他の楽器とのアンサンブルなど)、日本に古くから伝わる音楽形式そのものを、かじらなくてはいけない。
もちろん本を読むだけではつまらない。雅楽とか祭囃子のCDを探し出し、レンタルしては聞く。実際に聞いて目からウロコ、いや、耳からウロコというべきか? 興味深い発見がいろいろ。
一番驚いたのは、雅楽が現代音楽に近いものがあるということ。まるで優れた現代絵画を見ているような美しさ。
ただ、現代音楽はわざと不規則性や雑音を取り入れて常識的な解釈を拒んでいる一方で、雅楽はきちんとした論理や法則にのっとり、それでいて驚くほど新鮮でえもいわれぬ響きを生み出している。
日本の音楽の特徴として面白いのは、音程の正確さを求めないこと。テンポが非常にゆっくりなこと。雑音や間はあらかじめ予定された音楽の一部だ。そのかわり、楽器同士の呼吸をあわせるのが重要らしい。
実は、日本の音楽について調べていると、昔国語の教科書で読んだ話が何度も頭をよぎった。もうタイトルは忘れてしまったが、胡弓弾きが主人公の話で、彼は森の中でただ一人、小鳥のさえずりや風の音を相手に練習をする。そしてついには自然の音と見事なコラボレーションを成すほどの腕前になる。あるとき、彼は胡弓の腕を見出され、町でコンサートを開くことになるが、実際にステージで弾いてみると、それは既成の音楽とはまったく違う不可思議な音で、聴衆は誰一人、彼の音楽を理解できなかった。そして期待はずれとされた胡弓弾きはまた森に帰り、ひとり森の生き物を相手に楽器を弾きつづけたという、そんな話。
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