「春」といえばヴィヴァルディの「四季」が有名ですが、管理人としては、「運命」(もちろん、ベートーベンの交響曲第5番のこと)の二楽章がおすすめです。なぜって、ビオラとチェロのパートソロではじまるから、ではなく、本当にのどかであたたかいメロディにあふれているからです。
ビオラとチェロが奏でた第一主題は繰り返されるたびに、少しずつ複雑になって伴奏の量もふえてゆきます。コントラバスが豪快かつ繊細に奏でる第4変奏が終わると曲は中休み。美しい音階があちこちのパートを飛びまわります。
ベートーベンの凄いところはいろいろありますが、中でも、ごく普通の音階(つまり、ドレミファソラシド)をアレンジによって素晴らしい音楽へと変貌させる技術には、もう感動! の一言しかありません。特に交響曲7番の第一楽章は音階の嵐です。つい踊り出したくなるようなダイナミックなエネルギーに満ちています。
さて、中休みのあとはオーケストラの華、バイオリンの登場です。ファーストバイオリンが他の楽器を従えて、主題を夢のように美しく堂々とかなでます。その様はヨーロッパの大聖堂を目の当たりにしているかのように、実に荘厳で美しいものです。
クライマックスのあとは、主題のかけらを各楽器で順に回しながら、穏やかにおさまってゆきます。聞き終わったあとは、なんというか、寒い外から帰ってきて、あたたかくて美味しいシチューをこころゆくまで食べた、みたいな感じでしょうか。お腹一杯で幸せな気分になります。でも、これで「運命」は終わりじゃないんですね。「巨人のダンス」とも言われる第3楽章、怒涛の第4楽章がつづきます。真面目に「運命」を聞くと、すっかり疲れてしまうので、のどかな春の日を楽しむなら、第2楽章までにとどめておきましょう。
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