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びおら弾きの微妙にズレた日々

「俺たちの戦いはこれからだ!」

まるで、話の途中で打ち切りになってしまった漫画のラストみたいな台詞ですが、7月16、17日にわたって行われた「ラインの黄金」集中練習の記録です。
今回は歌手の方々も参加されて、大変な盛り上がりを見せました。


一日目の午後枠は各セクションに別れて分奏。弦楽器チームは、マエストロ自らの手でゴシゴシしごかれた。「ここは難所につき、そっとしておいて下さい」という箇所を容赦なく狙い撃ちされて、三時間半の後には、雑巾のようにヨレヨレになった弦楽器弾きの姿が散見された……かも。

夕方の休憩の後、夜枠で全員集合となり、2幕と4幕の練習。
2幕では巨人のモチーフがとても印象深いのだが、マエストロいわく「巨人のどんな演出よりも音楽そのものがヤバい」。
……確かに、あれを聞いたら誰しもトロルのような(脳みそが筋肉でできているような)巨人を思い浮かべるしかない。
4幕では、アルベリヒがヴォータンに指輪を強奪されるところがクライマックス。マエストロの解説によると、アルベリヒは指輪を取られた腹いせに「祝福」という名の呪いをかける。これが「指輪」全編の中で、一番重大で発端の事件なのだ。その後、神々とニーベルング族、巨人たちは指輪に翻弄されて次々と命を落とすのだから、呪いの強さ、恐るべしだ。
巨人にモチーフがあるように、指輪の呪いにもモチーフがあって、それが実に巧みに使われている。一例としてマエストロが挙げたのは、フリッカが金銀財宝を持ち帰るヴォータンたちを満面の笑み(たぶん)で出迎えるシーン。楽しげに歌う後ろで流れる音楽が「呪い」なのだ。夫ヴォータンが財宝とともに災いを持ち帰ったことに気づかない妻フリッカの脳天気さが皮肉な目線で表現されている。ワーグナーすごい。ドロドロの昼メロの情景を音楽で描ききる。

翌日は、朝イチから歌手の方々をお迎えしての合奏。残念ながら管理人は、町内会の仕事で午前は参加できず、ミーメ役のハマりっぷりを見逃してしまった。
午後からは1幕と4幕を。
ラインの乙女役のお二方、そして本編の主役とも言えるアルベリヒ役の歌手の方をお迎えして、1幕冒頭の水の戯れ→アルベリヒvs乙女のシーンから。
いやもう、アルベリヒが男前すぎて、どうしてラインの乙女たちが拒絶するのかわからないレベルですよ……。聞くところによると、指輪を手に入れてからの暴君ぶりもまた素晴らしいのだとか。
1幕を通した次は4幕ラストで、今度は乙女たちが「黄金を返して」と嘆くシーンへ。黄金のテーマが短調になり、なんとも言えない悲しい和音を奏でるところがグッとくる。やっぱワーグナーすごい。
歌手の方々は途中で退場されたので、後半はオケのみで練習。なんだかやたらに全体のテンションが高く、特に4幕で巨人の兄弟が殺しあうところの迫力は尋常じゃなかった。ここも演出より音楽の方がヤバい場所じゃないのかなあと思ったり。
また、「ヤバい」とは違うが、1幕の冒頭の「生成の動機(モチーフ)」、これが宇宙的なスケールを持っている。マエストロは「様々な種族が登場しては滅び、また新しく生まれ、でこぼこしながら地球全体が進化してゆく様子。(だから滅びたパートは大人しくなって新しく登場したパートに席を譲ってね/笑)」とおっしゃっていたが、まさにそれ。太古の海からいつの間にか神話時代のライン川になっているというイメージで、私などは心の中で「ふぉぉぉ……」と唸ってしまったのだった。やっぱりワーグナー(以下略)。

練習の最後にマエストロがおっしゃったのは、
「やっと譜読みができたね」
……あ、ハイ。
「これから僕の言うことをよく聞いて咀嚼して実行すれば、どんどん練習が楽しくなるよ」
……ですよね。

つまり、ここからいかに音楽の魅力を引き出し、提示できるようになるかが鍵というわけ。祝祭管が優れているのは、魅力的な部分をとても魅力的に演奏することができる点だという。
しかも、今回取り組む「ラインの黄金」は、色恋などの甘い要素はすっかり排除され、人間の野心や欲望、原始的な力がグロテスクなほどに描き出された、ある意味異形の作品だ。これをいかに徹底的にそれらしく演奏できるか。できたらスゴイよなあ。
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