びおら弾きの微妙にズレた日々

あっという間に初来団

ついこの間、熱い本番を迎えたばかりのような気がするのに、もう黄昏シーズンの初来団ですよ?

というわけで、ほぼほぼ初見状態でマエストロを出迎える。ああ恐ろしい。予想通りマエストロは祝祭管の初回練習を「下手くそでがっかりする」とブログにて表現されるも、がっかりの度合いが「衝撃的」→「割と下手」へと進化したと、ある意味お褒めの言葉(?)をいただいた。

確かに積み重ねの力は大きい。動機を聞けば、どんな意味があってどんなシーンなのかが想像できるようになっているし、ワーグナーの呼吸にも慣れてきた。くるくる変わる拍子記号にも慣れ、度重なる転調も「ああ、モチーフが交替したのね」ぐらいの気持ちでやり過ごせるようになった。そのモチーフにしても、すでにそれぞれのイメージを掴んでいるので、どんな雰囲気で演奏すればいいかはわかっている。これは4年かけて培ってきた強み。

ただし調号の多さだけはご勘弁。自分的には#なら4つまで、♭なら5つまではどうにか対応できるが、♭6つとなるとCの音までもが半音下がるので、未開拓の地、譜面を見ても音程がイメージできない。開放弦すべてに♭をつけなくてはならず、いっそすべての弦を半音程下げてチューニングしたほうが早いんじゃないかというぐらいのめんどくささ。

この日の練習はなんと、3幕2場、英雄の死から。幸せの絶頂からいきなり背中を刺されて倒れるシーン~葬送行進曲~ブリュンヒルデの自己犠牲~救済の動機&コーダまで。さすがマエストロ、全幕いやリング全体のなかで最もキモになる部分から始められた。ここがコケたらそれまでの積み重ねが台無しだから、早いうちから鍛えておこうというお心づもりなのか。

一度ラストまで通したあとは、3幕1場にもどり、ラインの乙女たちとジークフリートのやり取りを弾く。さらに続けて二巡目の葬送行進曲以降へ。大きな声では言えないが、ほぼ初見だったため、ついていくのが大変。でもおかげで目鼻はついたし、最後の盛り上がり&まとめの部分は最大の見せ場だけあって、弾きごたえたっぷり。ついに終わってしまうのだなあという感慨と同時に物語がちゃんと終わる安心感を感じた。結局火と水の力ですべてが浄化されてしまうのだなあと。ちゃんと大団円で終われるよう、これから数ヶ月かけて練習を積み重ねなくては。

「火と水の力」と書いて思い出したけれど、リングを弾き始めてからずっと気になることがあって、それは「ラインの乙女」たちの出自はどこか、言い換えれば彼女たちの父は何者なのか、ということ。物語でわかる範囲で考えると、水を司るラインの乙女たちは、ヴォータンたち一派とは違う系統の神(というか精霊)であり、大地の女神エルダ、そしてヴォータンのコントロール下にいるものの、明らかに彼に反抗している火の神ローゲと同じクラスタのような気がする。ヴォータンが台頭する前から存在していた神々で、しかも自然の根源的な力を象徴する神々。ヴァルハラが燃えても残り続けるであろう神々。だとすると、創造主クラスの神なのか。しかし、ここで興味深いのは、人間たち(ギービヒ家周辺)によって祀られているのが、フリッカ、ドンナー、フライアなどヴォータン系の神々であること。近くにライン川が流れているというのに、水の神を祀っている様子はないし、大地と知恵を司るエルダの存在も見えない。なんだか示唆的だなぁ……。続きはまた後日に。