久しぶりの祝祭管練習記。恐怖の二幕に挑んだ話をどうぞ。
1月12日は、そんなに久しぶりでもないマエストロ来団。この日はのちに講演会を控えているにもかかわらず、マエストロは最初からいくつものネタ…というか、「神々の黄昏」の音楽についての種明かしを披露。音符をさらうだけでは、ぜんぜん音楽にならず、音楽が表現しようとしているもの、また、音楽が持っているドラマ性について理解しないといけないことがよくわかる。
そして始まる2幕冒頭。
そう、凶悪なシンコペーションで始まる2幕冒頭ですよ! ひとりで楽譜を眺めていると頭がおかしくなりそうな狂気のシンコペ。それを弦楽器全体で弾くのだけど、マエストロいわく「元の力を見せつけるように」力強く弾くようにと。しかし、リズムがわからなければ弾きようがない。
ここでマエストロが歌う。不思議なことに難しいフレーズも簡単そうに聞こえてしまうというマジックが現れる。そもそも譜割りが複雑過ぎて耳で覚えたほうが早いのは明らか。
こうして、冒頭を何度も繰り返すうちに、だんだんみんなの息が合ってきて、なんとも禍々しい空間が立ち上る。いったい、何をどうしたらこんなリズムを思いつくのか。ワーグナーの頭の中はまったく謎だ。
2幕はドラマがどんどん進行していく場所。
ハーケンが亡霊と化した父アルベリヒと語らう月夜の場面、荒々しい「ホイホー」の雄叫びで始まる偽りの婚礼の宴、続いて拉致されてきたブリュンヒルデがジークフリートの不貞を暴露し、騒然となるも、忘れ薬を飲まされたジークがこれまた偽りの誓いを立てる。疑心暗鬼となったグンターとブリュンヒルデの間にハーケンが巧みにつけ込み、これでもかと憎悪を煽って、ブリュンヒルデにジークフリートの弱点を言わせてしまう。最後は身の毛もよだつ殺意の三重唱となって終わる。
こんなふうなので、音楽の展開も目まぐるしく、また美しさよりもグロテスクさが強調されている。マエストロの解説で特に興味深かったのが、2幕最後の三重唱について。ワーグナーはいかにもオペラ的な三重唱を嫌っていて、基本的に自分の楽劇の中では使わなかったというが、あえてここで三重唱を使ったのは、あえて作り物らしさを出すという意図があったのではないかという話。真実とは真逆の方向にある(ハーケンによって負の方向へと)作られた感情の高揚を表すのにはぴったりな演出だというわけ。
確かに、初めて対訳を見ながらこの殺意の三重唱を聞いたときには、身の毛もよだつ気分を味わった。これがあるから、3幕ラストの浄化のシーンがより心に染みる。
音楽的には、細かな動きがたくさんで、それも正直、耳で聞いて覚えたほうが早い(覚えきれるかどうかは別として/汗)ので、今回の練習録音はたぶん何度も聞き直すことになるに違いない……。
そう、実はこの日、管理人はどうしても仕事を抜け出すことができなかった。しかしありがたいことに、来団時には練習録音の配信がある。欠席者にとっては命綱にも近いし、もちろんちゃんと練習に出たときも、おさらいをするのにぴったり。
ここ2ヶ月ばかり、練習に行けない日が続いて記事も書けず、それではつまらないので、練習録音をもとに参加したつもり(?)で記事を書いてみた。
PR