なんて優雅に挨拶している場合ではなかった。
ひと仕事終え、おおよそ三週間ぶりに楽器を取り出したら、マイびよらはご機嫌斜めで、G線とA線がぼよーんと緩んでいた。A線のペグを回すなんざ、どれだけぶりか(普通は駒側に取り付けてあるアジャスターをいじれはOK)。
まあ、楽器も人間と同じで、季節の変わり目はあまり調子良くない。生き物ですからね。
そんなわけで、最初は開放弦の響きのチェックから。フォームが乱れると、もうこの時点で違和感を感じるので。それからゆっくり音階を弾いて、左手の筋肉のなまり具合を確かめ(涙)、これはアカンと観念し、適当な練習曲を遅めのテンポで、できるだけ丁寧に弾いてみる。といっても、ちょっと気が緩むと、音の扱いが乱雑になるので要注意。右手も気をつけないと、弓の重さに振り回され、意図しないリズムになってしまう。バランス感覚大事。
だんだん調子が出てきたので、何か面白い曲はないかと、楽譜入れをごそごそし、たいていはバッハの無伴奏チェロ組曲ビオラ版に手を出すところを、今日はC.P.E.バッハのビオラ協奏曲を選んでみた。びおら弾きなら知らない人はいないと思われる、バロック時代の貴重なビオラ協奏曲だ。一楽章の冒頭が、これまたカッコいい。
なんてことのない、C-G-E♭-Cのコードで始まるのだが(ハ短調の主和音……たぶん。←楽典は真面目に勉強してないのでご容赦下さい)、E♭とCの音の幅がキモで、いかにも短調っぽいやや暗めの響きがバシッと決まると成功。ちょっとしたヒーロー気分が味わえる。明るい和音になったり不協和音が交じると残念。響きを作るこの快感は、音の高さの微調整がきかないピアノやギターでは恐らく出せないものと思われる。
実はこの曲、学生時代から幾度と無く挑戦してはト音記号が出てくるあたりで挫折していた。コンチェルトだから当然のように高音・高ポジションが出てきて、一楽章の場合、最高音がA線の6ポジ、4の指で取るCの音。ワーグナーやマーラーをやっていると当然のように登場する音域ではあるけれど、若い頃はそんなハイポジなど弾いたことがなく、一人でさらっていると、正しい音に当たっているのかどうかさえわからなくなってしまい、先に進めなかった。今は余裕でわかる。こういう時は年をとった(経験を積んだ)ことに感謝。モスキート音は全然聞こえないけど、ハイポジの音はちゃんと判別できるようになった。
で、これからまだまだ長いワーグナーの楽譜との戦いは続くわけで。
ラインの乙女たち、首を洗って待ってなさいね(なんか違う)。
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