アニメ放送から始まって劇場版まで、長いことかかってやっと最後を見届けた。
正直言って、アニメシリーズの方が構成が面白いのだけど、どうしても尻切れトンボの感がぬぐえず、劇場版はベタな展開で(というよりは、伏線の仕掛け方が安易なのと、監督が劇場版の間合いに慣れていないせい?)地味なオチだけども、そこが妥当だろうという落としどころで悪くなかったと思う。少なくとも神山監督のメッセージは伝わる。
まあ、ものすごく簡単かつ乱暴にまとめれば、ニートたちに対しては、引きこもるエネルギーを外に向けろと訴え、富を抱え込んだ古い大人たちに対してはそんなに抱えてどうする、少しは世のために使えと、そんなことを言っている。そうしなければ日本はミサイルを撃ち込まれる以上にひどいことになるぞと。
もうね、テレビシリーズのころから「この国は行き詰まっている」とか「ダメになる」とか、悲観的な台詞が物語中の大人の口からしょっちゅう発せられて、いくらなんでも煽りすぎでょ、と思っていたけれど、昨年の後半から今年にかけて、煽りすぎでも何でもない状況になってきてるのが笑えない。
で、誰が何をしても、国の根幹をなす「国民」はなかなか動かず、文句ばかりたれるし、総理大臣や最高責任者はスケープゴート(あるいは生贄、あるいは人身御供)と化している。それでも国を動かそうとするなら、「国民」ではなく「個人」とつながり、サシで訴えるしかない、と神山監督は言いたげだ。アニメを通じて「視聴者」ではなく個人ひとりひとりにメッセージを届けることが可能かどうか――監督はそれさえ試しているように思える。
その神山監督の代弁者(?)とも言える主人公の滝沢朗がキャラ的になかなか興味深い。「王子さま」にふさわしく、今時の若い子の理想を集めてつくられたような男の子であり、設定・性格ともに完璧すぎてリアリティが薄いが、かといって類型的じゃない。うん。ヘタレでもなければマッチョでもないけれど、頭の回転が早くて危機対応能力は抜群。人懐っこく、人の心をつかむコツは知っているけど群れない。母親に捨てられた過去はあるけど、トラウマ持ちとはほど遠く、まっすぐな心を持っている。彼が必要とする何かがあるとしたら、何があっても自分を信じてくれる誰か。それだけ。信じられないくらいいい子だ。
もしかすると、これから彼みたいなタイプが流行るんだろうか? 最近のアニメはあまりチェックしてないから何とも言えないけど、このタイプを描くのは簡単そうで難しいぞ。
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