遺体を腐敗から守り、できるだけ生前の姿に修復して棺に収めるエンバーミングという技術がある。このエンバーミングを生業にしている青年が主人公。読み切り連作。
7年ぐらい前から連載が始まっていてドラマ化もされたようだけど、それは全然知らなくてコミックレンタル店の棚で見つけて手に取ってみた。
人の死にかかわる仕事なので、濃くて深いドラマがたくさん登場する。
逆にドラマを作りやすい設定だから、一歩間違うと人の死を料理か何かの素材のように扱ってしまう危険があるけれど、作者はそうならないよう、一話ごとに登場人物に真摯に向き合っている(たとえ一回きりの登場だとしても)感じが伝わってくるので、どんなに泣ける話でも嫌みにならない。
ほとんどの話がエンバーミングされる本人や遺族を軸にした物語であるけれども、この3巻はやや特殊で、主人公の間宮心十郎がいかにしてエンバーマーになったかという経緯が描かれている。
エンバーマーだった父との対立、葛藤。病気で亡くなった母をエンバーミングした父に対する反発と嫌悪。父を失ってからようやく仕事の意味を悟り、アメリカへ留学してエンバーマーになるため猛勉強する姿。勉強しながらも仕事の意味を求めて迷い続け、人(遺体含む)とふれ合い経験を積みながら自分なりの答えを見いだす過程。
成長物語として、本当に丁寧で王道な描き方なのに、いや、だからこそ、ストレートに「いいもの読ませてもらいました」という気持ちになるのだろうか。
おかげで、それまで「腕のいいイケメン職人・しかも二次元世界の作り物」という認識しかなかった心十郎が、一人の血の通った人間として心の中に存在し始めてしまった。
それだけでなく、心十郎の父・ダドリーがそれはもう好みのタイプですっかり気に入ってしまったのですが……。なにしろすでに故人(T.T) 今ごろ天国で奥さんと仲良く息子を見守っているのでしょう。
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