とうとう最終巻。9年にわたる兄弟の旅がついに終わる。
きっちりかっきりハッピーエンドで。
エルリック兄弟が無事に「正解」にたどりついたことで、世界はゆっくりと修復に向けて動き出す。
あれだけ風呂敷を広げ、すさまじい展開になったにもかかわらず、きちんと丁寧に後味よくまとめられてるところに感嘆した。
表紙の裏にいつも載っている作者の言葉によると、「鋼」の台詞では、できるだけ感謝の挨拶の言葉を入れるようにしたそうだ。いい意味で大人目線だなあと感心することしきり。
思えば、大人キャラの造形とか台詞の内容には、若い作家には到底書けないでしょ、という分別くささが滲み出ていたものね。私はそういうところが好きだったけど。
この作品で誰を一番気に入ってたかって、それはもちろん、兄でも弟でもなく、父。
ホーエンハイムが一番重くて色々な後悔や責任感を背負っていたと思うのね。ホムンクルスとの関係、人の魂の塊である賢者の石を抱え込んでしまったこと、さらにそれが原因で、満足に家族と一緒に過ごすこともできず、世界を守る旅に出なくてはいけなかったこと。子どもたちが暴走してしまったことに対する罪悪感。それらが最後にちゃんと報われたというのが、もうね…。
だからオマケページの後に続く、本当のラスト3ページには泣かされた。自分もまた子どもを育てている立場だからだと思う。トリシャとホーエンハイムの気持ちは痛いほどわかるのだ。
そうそう、キンブリーとグリードも好きだった。両者に共通するのは、善悪関係なく己の信念に忠実に生きたということかな。世間的な価値観でなく己の価値観のみに従い、邪魔をする者はただ排除する、という強さと潔さが格好良かった。
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