光のない朝(image)
今回のテーマも変わらず深い。身体の障がいについて真正面からぶつかっていた。
人は技術の力で身体的障害を消すことはできるのか、そしてそれは果たして正しいことなのか。いや、それは個性を否定し差別を助長すると久島は明言する。ああわかってるなあ、この人……と思って好感度は余計にアップ。
ゲストキャラとして、生まれつき目が見えなかった少女が登場。義体化して視力を得たものの、そのために苦しい思いをしてた。
結構知られた話だし、作中でホロンが説明していたように、生まれつき視力がない場合、脳の中で視覚を司る部分は発達しない。その代わり、聴覚、触覚、嗅覚などがそれを補うよう発達する。だから、頭の中の世界は視力を持つ人とずい分違う。
だから、大人になってから手術その他の手段で(RDなら義体化)目が見えるようになっても、脳が視覚情報を処理できなくて、本人は混乱状態に陥ってしまう。ゲストキャラの少女、エイミも同じ。彼女は見えるようになったことで大切なものを失ったと感じ、メタルアーティストとしての創作活動さえできくなくってしまう。
彼女が失ったもの――それが地球律を解明する手がかりにつながるというあたり、シリーズとして押さえるべきところは押さえているなあと感心する。
失ったといえば、波留も同じこと。彼は時間という、取り返しのつかないものをなくしている分、よけいに痛い。
「失ったものを取り戻せるかどうか分かりませんから。……どこかでかつての自分に、本当の自分に戻れることを期待しながら、現状を受け入れて生きていくのかもしれません。それもまた─」とつぶやく波留は本当に切なかったが、なんとミナモの返事は、
「それではどっちにもなれない気がする」だった。おお、最凶のひと言。もちろん彼女の頭の中にはエイミのことしかなかったから、自分の言葉がどれほど波留の心をえぐったか自覚してない。夜の海辺でミナモの言葉を静かに受け止める波留の姿が心に染みた。
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COMMENT
心の目で見る
立花隆のサイボーグ特番を思い出しました。
ミナモちゃんが電脳差別にちらと触れていて、あぁやっぱり、と納得しました。できればセリフでなくそういう状況を描写して欲しかったです。
>最凶のひと言
若さゆえの残酷さ(喪失した経験が無い)でしょうか。でも電脳差別にもめげていない様子からして、ミナモちゃんは強い存在ですね。ハルさんと対比すると、生命力の象徴とも取れます。だから二人はバディなのですね。
Re:手ざわりの風景
もちろん、サイボーグ特番にあったように、マシンの力を借りて生活の質が上がればそれに越したことはありません。ただ、↑のような副作用が生じることも承知しておかなくてはいけないと思うのです。
なんだか。今の社会の若者たちが、KYにならないよう、まわりから浮かないようにと、ひどく気を使っている様がちらりと頭の片隅に浮かびました。
電脳化差別<このシリーズの中ではものすごく微妙に出てきますね。たぶん、電脳化と非電脳化の関係は、現代でいうと、携帯を持っている人と持たない人の関係にあたるのでは、と思います。差別と言うよりは不便を強いられる、に近そうです。
ミナモは強いというか、どこまでいっても天然で野生児ですから(汗) その天然さが波留さんを救っているんですね。