2006年にwowwowで放映されたアニメ。全23話。某所で存在に気づき、なんと3年遅れで見ることに。荒廃した地球+ドーム都市+人間とロボットの共存という設定を知ったら、当たりでもハズレでもいいからとにかく見ずにはいられなかった。
全体的な評価は、最初のうちは、有名先行作品の影響ばかりが目立つし、人物描写は浅いしで、突込みどころ満載のB級だと思っていたのに、だんだんB+からA?という具合に上がってゆく微妙さ。この作品のキモは環境問題でもロボット問題でもなく、見方によってはSFでもない。作中に散りばめられた、コギト、エルゴ、モナド、レゾン・デートルなどの単語(あるいはキャラ名)から察せられるように、哲学的に自己の存在とは何かを問う物語だったりする。
"cogito, ergo sum" 「我思う、ゆえに我あり」byデカルト
詳しい設定等は公式サイトへ→
★
おおまかな枠組みはこんな感じ↓
地球を荒廃させた人類は人工衛星軌道をまわる宇宙船へ避難し、地球の自然が自力で回復するまで長い年月を待つことにした。同時に人類再生計画として、人類(=創世神)の代理人、プラクシーという生物を作り出し、300体を地上に送り込んだ。プラクシーの役割は地球上で生きられる人類を生み出すこと。試行錯誤ののち、プラクシーのうち一体が人類の再誕に成功した。その時点でプラクシーは用済みとなり、彼らを消滅へと導くプログラムが動き出す。そのとき、プラクシーたちはどうするのか。あらかじめ組まれたプログラムに従って静かに消えるのか、創世神である人類に抗う道を選ぶのか。それを、記憶を失ったプラクシー、ヴィンセントと、彼が創りだしたドームの住人、リル・メイヤーの視点から描いている。
ストーリー全体を貫く流れは「プラクシー」という存在に関する謎解きだけども、寄り道的な話も多く、そのほとんどが現実と夢の世界を行ったり来たりするような話。白い霧の中で謎の本屋に迷いこむ話、ドッペルゲンガーが現れる話、わけもわからずいきなりクイズ番組に放り込まれる話、幻覚の中で無意識を操作されかける話、奇妙なテーマパークのゴミ捨て場に落ちこんでしまう話……。
どれもこれも「今見えている世界はリアルワールドなのか? そもそも現実とは何?」と視聴者に問い掛けてくる。その上で本編がアレ、つまり「不完全な人類」が創世神と崇めていた存在が、実は本物の人類によって作り出された不完全な創世神だったというからくりになっているので、余計に自分の足もとをすくわれるような気になる。
その中で救いになるのがヒロインであるリル・メイヤー。彼女はひたすら真実を求めて行動し、それがどんなに過酷な結果になろうと現実である以上は受け入れようとする強さと懐の深さを持つ。彼女の強さが、ヴィンセントという名のプラクシーを動かし、運命からの逃避と忘却ではなく抵抗を選ぶよう導いてゆく。
地球再生の道具として地上に置いて来た生き物やオートレイブ(アンドロイド)たちが牙を向いてくると知ったら、「本物」の人類は……恐いだろうな。ちなみに、視聴者は「本物」の人類ですから。
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