21-8「65年後の目覚め」
TVシリーズでDr.キリコ初登場。驚いたのはそれだけでない。今まで見たシリーズの中で最高に衝撃的なラストだった。
昨年の冬に公開された映画版を見ていないので、画面でキリコを見るのは初めて。原作でもほとんどお目にかかれていない。が、何かと噂に聞くこのキャラ、好きなタイプかもしれない。
BJと並ぶと、まさに、黒い天使vs白い死神で、なかなか素敵。(そういう問題じゃないか/汗)
肝心の中身の話がどうだったかというと、65年もの間植物状態で、しかも年を取らずに生きてきた患者をどうするかという話だった。
親族の者は、もう65年も生きたし、金銭的な問題もあるので、安楽死させてやりたいとキリコを呼ぶ。
その一方で、シュタイン博士を筆頭とする医療チームは、非常に珍しい症例をもつこの患者を詳しく検査し、研究したいと申し出るが、患者の親族に断られる。
そこで医療チームの一員がBJを呼んで患者が意識回復できるように手術を頼むという話。
BJは成功率の低い手術だからと初めはこの話を断るのだが、のちにキリコが関わっていると知り、即患者の手術にとりかかる。
長い手術を待つ間、ピノコが医療チームの(美人)女医につぶやく言葉が印象的。
先生はね、あんたのためじゃなくて患者さんのために戻ってきたのよさ。……たぶん。
ピノコはうすうす気づいてたらしい。BJが自分の意地のために手術をしたらしいことを。さすが奥さんだ。
手術の結果どうなったか。
患者は奇跡的に意識を取り戻した。そして自分が65年間眠っていたことを知らされる。もう家族は姪ひとりしか残っていないと知るや、パニックを起こし、同時に急激に老化がすすみ、あっという間に老衰で死んでしまった。
「どうして僕を眠らせておいてくれなかったんだ!」と恨めしげなひと言をのこして。
この件に関しては、キリコの勝ちだ、と私ははっきり思った。患者の親族の判断は正しかったのだと思う。
BJはさすがに正面切って自分の負けは認められないから、キリコの前で自分たちの愚かさを呪う。
医療は神業ではない。むしろ人間の業のなせるわざなんだろう。少しでも長生きしたい、若くありたい、力強くありたいなどなど、人間の欲求はきりがない。
だから、最後に患者の姪が去りゆくBJに「おじと話ができて嬉しかった。ありがとうございました」と呼びかけるところ、すごい違和感があった。
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COMMENT
忘れた頃にコメント
確かに,今回のBJのやり方は,間違いだったと思います。
ラストの姪の言葉の違和感>
確かにそうとも思えます。
見方を変えれば,何も言わないまま彼を逝かせてしまった場合との比較。
彼は本当は生きたかったのか,死にたかったのか。
その答を知らないままただ安楽死させた場合,この女性は一生苦しんだのだと思います。
その答(死ぬことを望んだ)がわかった・・・それがあのお礼の言葉だったのでは?
ご本人には,いさささか辛い最後だったとは思いますが・・・
Re:忘れるには強烈すぎて
なかなか強烈な話でしたね。
>その答(死ぬことを望んだ)がわかった・・・それがあのお礼の言葉だったのでは?
なるほど!(ぽん!)
それなら納得できます。患者の姪が抱いていたであろう罪悪感。そこまで考えると、BJの行ったことは奇跡といってもいいのでしょう。
もちろん、患者にとってはキリコの方がありがたかったのでしょうが。
そこに安楽死の微妙さがあるのですね。
おかげで疑問が一つ氷解しました。鋭いコメントありがとうございました。