ここ数日、これをちまちま読んでいる。
ヴォイド・シェイパ - The Void Shaper (中公文庫)「スカイ・クロラ」の作者、森博嗣のシリーズ物で、師を看取った剣士見習いが、独り立ちしてあてどのない旅に出る物語。
しみじみ面白いなあと、お気に入りのお酒を飲むみたいに楽しんでいる。
非常にありきたりな筋立てで物語は始まるが、それが陳腐にならないのは、独特の文体のせいなのだろう。淡々とした含みのない物言いが今の自分には心地よい。
最近は、作品作りための資料になりそうな本とか勉強になりそうな本を意識して選び、自分の好みにドンピシャリな本をあえて避けていた。いったん好きなモノにはまると、似たような傾向の本しか読まなくなる体質なのでそうしていたのだが、結構ストレスになっていたのかもしれない。
脳みそにばかり栄養を与えて、心の世話を焼くのをすっかり忘れていたようだ。(体のケアは言わずもがな。そろそろ散歩のシーズンだ……、とウエストラインの名残を見て思い出す)
面白いことに、この本と、もうひとつ、マーラー「大地の歌」のCDはたまたま某ブックオフで見つけたものだ。今月も家計が厳しいなあとぼやきつつ、買い物に出た帰りにふと立ち寄ってみたら、こんな時に限ってクラシックCDの500円コーナーは充実しているし、文庫本コーナーにも興味深い本が入っている。ブックオフの棚ではなかなかお目にかかれない「ヴォイド・シェイパ」があったのは、それなりに縁があったのだろう。
本気で欲しい本があれば、ネットで探すのが一番だ。グーグル先生にちょいと尋ねれば、安い中古本やCDがゴロゴロ見つかる。目的のブツを最低限の出費で入手したい時にはとても助かるが、だからこそ、偶然に左右されるリアル中古書店で出会った本には何かしら意味を見出してしまう。偶然出会ったのが、何年も買おうかどうしようか迷っていた本だとしたら、なおさらそうだ。まるで今が読み時だと、本にささやかれている気持ちさえしてくる。逆に無意識に潜む何者かがタイミングを見計らって、中古書店へ行けとささやいた可能性も考えられるがいずれにしても結果は同じ。昔から時々あるのだ。読むべき本が読むべき時に目の前に現れるという現象が。
せっかく出会った本なので、よけいな分析はやめて、純粋に楽しみたいと思う。
と言いながら、きっと読了して数日後には読書ブログの投稿欄を立ち上げ、悪戦苦闘しているのだろうなあ。これは物書きの性だ。
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