GWが過ぎてから感染者数は、東京都内をはじめ全国的に落ち着きを見せており、緊急事態宣言の解除が検討され始めた。この時期、ツイッター上で興味深い動きがあった。
それは、ある法案の可決に反対するハッシュタグ。
これまでにも、政治に関するタグは山のように発生しているし、目にしたところで、そういう人もいるのね、くらいの気持ちで読み流してきた。だいたい、ツイッターで政治的意見を発信したところで実際に政治を動かしている場所には届かないし、だからこそ比較的気楽な気持ちで発信できるのだ。
ところが、一連の新型コロナウィルス対応では、政治家もツイッターをはじめとするSNS界隈の動きを気にしているような動きを見せた。例えば、和牛券の配布が消え、コロナ給付金も「特定層に30万円」→「国民全員に10万円」となり、マスクがないと騒いでいたら(あまり役に立つとは思えないし、未だに届いていないが)布製マスクを全世帯に2枚ずつ配布することが決まったし。
そこで気を良くしたのか、勝ち目はあると見込んだのか、ツイッタランドの住民たちはさらに一歩を踏み込んだ。GWが終わって最初の週末に「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグが暴発したのだ。
※「検察庁法改正案」て何? と気になる方は以下に紹介する記事をどうぞ
ごくシンプルに説明すると、これまで安倍政権の守護神と言われてきた黒川検事長が今年の2月に定年を迎えるはずだったのが、法的根拠の薄い閣議決定(今年の1月31日)により、半年間定年が延びたことを踏まえ、現在国会に提出されている改正法案において、検事の定年を延長する内容が記載されているため、これは黒川氏を検事総長にして、政権に有利な状況を続けようとしているのではないかという推測が流れたというわけ。
確かに問題点が多い改正案ではあるようだ。しかし、ハッシュタグの暴走には驚いた。何しろ、いきなり自分のタイムラインが同じタグで埋まったのだから。ふだんは政治的なハッシュタグの使用に慎重なアカウントでさえ遠慮がなく、もともと積極的な人は毎日のようにしかも何種類もの同じような内容のタグを湯水のように使う。
ただし、このタグも他の例と同じようにお決まりのコースをたどった。
トレンドに登場→
どこかの媒体が取り上げる→
トレンドから落ちたり呟き数の合計が少なくなったりする→
不正操作の噂が流れ、字句をほんの少し変えただけの新しいハッシュタグが登場する→
カウンタータグ「~改正案に興味ありません」が生まれる→
「正確な内容を知らずに雰囲気だけでツイートしている」と批判するツイート増える→
右からも左からも陰謀・工作説が流れる→
数日で最初のハッシュタグは影を潜め、今は「#検察に安倍首相に対する捜査を求めます 」に落ち着いたり、以前から安定の「#安倍は辞めろ」が生き残ったりしている。
もちろん、最初からこのタグをいっさい使用せず、盛り上がりに懐疑的な人もいた。たとえば、この動きが今のタイミングで起こっていることに意味が見いだせない、ツイッターで政治が動くはずもない/動かすべきではないと考えている人たちだ。自分の場合は、積極的には使う気はないが、みんなが使っているので面白がってやってしまったクチ。今回の騒ぎでどこまで政治家が反応するのか見てみたかった。猫をも殺しかねない好奇心の仕業だ。
一連の騒動を眺めていてたどり着いた結論はこれだった。ちょうどコロナ禍の影響で在宅の人が多く、ストレスが溜まりがちだったところに、不要不急っぽいグレーな法案が提出された。もともと現政権に対して不満を抱えていた人たちがここぞとばかりに意思表示を始めたと見るのが妥当なところだろう。たとえ誰かがどこかで煽っていたとしても、受け皿がなければこんなには広がらない。
意思表示は決して悪いことではない。それどころか、今の世の中を生き抜くには必要不可欠なものだ。問題があるとしたら、適当な時期と場所を見極めているかどうかだろう。もし、今回の法改正に本気で興味があって検事長の行方が気になる人ならば、必ず8月に動き出すはずだ。
ちなみに現在、検察庁法改正案の採決は野党が粘っていて、予定より遅れているとのこと。
PR