忍者ブログ

びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「カンディンスキーと青騎士」展

「これは必ず行かねば」と思いつつ、家の用事に忙殺されてなかなか行けず、そうこうしているうちに展示期間が終わってしまうと気づき、最終日の三日前にかけこんだ。

「カンディンスキーと青騎士」展
愛知県美術館にて
2011年2月5日〜2011年4月17日
紹介ブログ(愛知県美術館ブログより)
http://blog.aac.pref.aichi.jp/art/2011/02/000437.html
http://blog.aac.pref.aichi.jp/art/2010/11/000401.html
http://blog.aac.pref.aichi.jp/art/2011/02/000440.html
抽象画の先駆者であるカンディンスキーは、若い頃、それまでのアカデミックな絵画に反発し、同志を募って「青騎士」という芸術家グループを結成した。彼の同志や実質的パートナー(要するに愛人ですが)の作品を同時に展示することで、互いにどんな影響を受けたり与えたりしたかがわかるようになっている。また、最先端で活躍する芸術家の作品や論文を掲載した芸術年鑑「青騎士」の初版本も展示。

抽象画の大家であるカンディンスキーも、出発点は普通の風景画や肖像画だった。それが研究を重ねるにつれて具象画へと進み、シェーンベルクの音楽に決定打をもらって抽象画へいたる道を見つけた。カンディンスキーに率いられた「青騎士」のメンバーはどうやって古い価値観と決別し、新しい価値や表現方法・理論を発見していったのか、その道のりがよくわかるようになっていた。
完成された絵を見てその技法や思想性に感銘を受けるのもいいが、発展や変化の過程を辿る展示も面白い。今の自分にとっては後者のほうがより興味深いし、学ぶことがたくさんある。

さらに突っ込んだ視点で、カンディンスキーと彼のパートナーであったガブリエーレ・ミュンターの絵を見比べつつ、この二人の交流と別れに思いをはせてみた。
カンディンスキーとミュンターはミュンヘンの美術学校で講師と生徒として出会い、その後約十年にわたって生活をともにしたが、第一次世界大戦が勃発するとカンディンスキーは一人でモスクワへ帰ってしまった。ドイツ人であるミュンターはミュンヘンに留まったまま、そしてカンディンスキーとの関係は自然消滅のような形になってしまった。
なぜ正式な結婚をしなかったかというと、ひとつは、カンディンスキーは既婚者だった上に宗教上の理由で離婚手続きが難しかったこと。もう一つは、推測ではあるがミュンターに才能がありすぎたことではないかと感じている。いや、才能がありすぎると言うよりは、絵を見比べていると、表現方法において目指す方向が違ってきた結果ではないか。絵に対する根本的な姿勢が少しだけ違っていて、その違いのために結婚に踏み切れずにいたのではないかと思う。
普通の夫婦でも価値観の違いはよくある話だが、たとえ日常生活を送る上では支障がなくても、同じ芸術の道を歩もうという仲なら、その食い違いは決定的だ。
例えば、二人が同じ風景を描く。牧師館と墓地、といったありふれた風景だ(この2点の作品「コッヘル――墓地と牧師館」は並べて展示されていた。展示のセンスの良さに脱帽)。ミュンターの視線は対象物に対して真摯で丁寧だ。対象への視点が近く描かれたものそれぞれに物語を感じる。一方、カンディンスキーが描くと、対象の細部は略され、構図と色彩のバランスが前面に出てきている。すでに風景から風景以上の何かを抽出している格好だ。この視線が抽象画のもととなる。二人とも筆遣いはよく似ているのだが、絵を描く態度が根本的に違う。
カンディンスキーが抽象画へと進み始めた時期(シェーンベルクのコンサートで非常に感銘を受けた時期)と二人の仲が醒めてきた(カンディンスキーがひとりでモスクワへ去ってしまった)時期はだいたい一致する。そしてモスクワへ戻ってから彼の抽象画のスタイルが完成する。ミュンターはカンディンスキーの目指す方向へついてゆけず、カンディンスキーにしても彼女を道付れにするつもりはなかったのではないか。
ちなみにカンディンスキーの次の奥さん、ニーナ・アンドレーフスカヤは27歳年下と非常に若く、自ら芸術活動には関わらないタイプの女性だったようだ。

うん、とても面白い企画展だった。豊作だ。
次はポロック展(2011年11月11日-2012年1月22日)をやるそうで、それも非常に楽しみ。

それから、やっぱりカンディンスキーは作品だけで見るなら、後期の本格的な抽象画が一番好きだなぁ。
PR

COMMENT

NAME
TITLE
MAIL(非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS(コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます

今月のつぶやき

ネタは切れてからが勝負です

☆CONTACT
→ littleghost703@gmail.com
※@を半角にしてください
☆Twitter→@O_bake
☆読書記録は別ブログO-bakeと読書とひとりごとでつけてます。そちらもよろしく。

ブログ内検索

アクセス解析

過去記事紹介

過去記事紹介・たまに読書ブログへとびます
過去記事紹介・たまに読書ブログへとびます

Copyright ©  -- びおら弾きの微妙にズレた日々(再) --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]