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びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

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なんて極悪人面だと思ったら、それが20世紀を代表する芸術家の顔だった話

フランシス・ベーコン(1909-1992 ダブリン生まれの英国人)という画家のことです。

豊田市美術館でベーコン展が開催されているというので(詳細はこちら→)、仕事が休みの日を狙って車を走らせた。何度も行ったことがあるというのに、さんざん道に迷った末にようやく美術館にたどり着いたという……。おかげで周辺の土地勘まで身につけてしまった。



だが、最初の展示室に入った時点で、苦労してきた甲斐があったことを知った。「神経組織を直撃する絵画」と言われるが、まったくその通りで見た瞬間に目が離せなくなる作品が次々と現れる。
幽霊のごとく半透明な人体、聞こえない叫びを上げる大きな口、檻のように人物像を囲む境界線。あり得ないねじれ方をする人体、透けて見える背中の骨などなど、刺激的なモチーフが盛り沢山に登場する。
2つの相反する世界のはざまや融合物が描かれている点にも惹きつけられた。例えば、あの世とこの世、肉体と幽体、人間と動物。聖と醜。どの作品も芸術的に深化した中二病テイスト全開だ。感性のツボをグリグリと押し込まれてしまった。
一体どんな精神の持ち主がこんな絵を描くのだろう。そう思うたび、最初の部屋で見た作家へのインタビュー映像が脳内に再生された。

実は、最初の展示室に入る前に、作家の紹介をする映像コーナーがある。作家本人へのインタビューだ。何の予備知識も持たないままま、とりあえず作家とご対面というわけで、その第一印象はコテコテのイギリス英語を使う人だな、ということ、次いでひどくアンバランスな顔の持ち主だなということだった。ベーコン氏は左右で全然違う雰囲気の顔をしており、右半分の人相がひどくて、人殺しの1つや2つ隠しているんじゃなかろうかと妄想を走らせてしまうレベル。例えて言うなら「ドリアン・グレイの肖像」に登場する、絵の中の醜いドリアンがこんな感じ? でも左半分だけ見たら、ちょいワルおやじっぽい相当のハンサムなのだ。いったいどんな人生を送ってきたらこんな顔に?

とても気になったので、帰りにミュージアムショップで「美術手帖」のベーコン特集号を購入。若い頃の写真を見ると、左右均等な普通のハンサムボーイなので、生まれつきあの顔だったわけではなさそうだ。
作家の生涯をたどるページを開いてみれば、予想通り壮絶だった。親との不和はもちろん、家を追い出されてから資金集めとして上流階級相手に違法カジノを開いていたとか、男娼まがいのことをしていたとか、色々出てくる。まあ、同性愛というのは珍しくないにしても、二度も恋人に死なれているのはさすがにこたえたことだろう(……しかも個展前夜に!)。おかげで「呪われた画家」の称号まで頂戴した。詳しくはwikiなどでどうぞ(便利な世の中になったものだわ)。

また、アトリエの汚部屋ぶりときたらもう、のだめ部屋の5倍くらい凄まじい。大量の資料(本や写真集、あるいはそれらのコピー)が地層のように積み重なり、壁は飛び散った絵の具の跡だらけ、絵筆は適当な空き缶に適当に突っ込んであって、それが資料の山の上に点在している、という具合(ただし、散らかしていたのはアトリエのみで、ほかの生活空間はきちんと整えられていたという)。しかもこの汚部屋ならぬ汚アトリエでないと創作が進まなかったという。部屋の中はその部屋の持ち主の心の有り様とリンクしているというが、この画家の場合はあえてアトリエのカオスを無意識の世界に取り込もうとしているように見える。
そんな芸術家が描く絵だから、相当キてるだろうなと予想したが、本当にそうだった。へぇーと思う人はとりあえずに跳んで、一つでもいいから作品を見てみるといいと思う。

こういうギリギリな作品は見ていて決して気持ちの良いものではないが、怖いもの見たさとでもいおうか、理不尽なものを目にした時、反射的にその謎をとこうとする心理が働くのだろうか、不思議なくらい目が離せない。
生理的な理由にプラスアルファして、一見どうしようもなく揺るぎなく感じられるこの世界が、実はボール球の上に乗ってかろうじてバランスを取っているお盆のように危うく脆いものだということを思い出させてくれ、そこに奇妙な快感を覚えるのもまた事実である。

夏休み中で子ども向けプログラムが同時開催されていたせいか、小さなお子様連れの鑑賞者もいたけれど、幼い子には正直言ってトラウマになるレベルで恐い絵がほとんどだったので、せめてR12指定くらいは必要じゃないのかなと最後に思った次第。



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