これもまた文化の日の話になるのだが、豊田美術館で開催されている「反重力展」を見てきた。あいちトリエンナーレ共催事業のひとつで、これも現代アートの展覧会。
まず、最初の展示室に足を踏み入れるとこれが待っている。
ジルヴィナス・ケンピナス《ビヨンド・ザ・ファンズ》
「扇風機の彼方に」……?
向かい合わせ扇風機が起こす風の力で空転しているのは、ビデオのテープ。よく、小さい子がイタズラしてはベロベロと引っ張り出すアレ。(もっとも、今はDVDの時代なので、めったにお目にかからなくなってしまったが)さすがにこの発想はなかったな。サイズ的には、扇風機がだいたい成人男性の背の高さ。
扇風機の部屋を出て、二つばかり展示室を過ぎると、明かりを落としたテクノっぽい雰囲気の部屋が現れる。それが、やくしまるえつこ《Λ(ラムダ)Girl》。部屋の周囲にぐるりと大量の小型スピーカーがぶら下っており(72台!)、耳を近づけると微かにホワイトノイズを発していることがわかる。部屋の真ん中には室内の状態を示すモニターがあり、鑑賞者の立ち位置が四角いドットで表示されている。鑑賞者を避けるように女の子の形をした何かがふらふら歩いているのだが、それはリアル空間では目に見えず、ホワイトノイズの音(たまに言葉が混じるらしい!)の大小で近くに彼女がどこにいるかわかるらしい。それが「ΛGirl」、つまりラムダちゃん。おもわずそばに寄って捕まえたくなるお茶目さ。
〈左〉中村竜治《ダンス》
ピアノ線で輪っかを作り、それを積み重ねることで、ひどく繊細な鶏小屋のような円形の囲いを作ってしまった作品。展示室全体を占拠する大きさで、囲いの高さは人の背たけぐらい。あまりの繊細さに、触っちゃいけないとわかっていても、つい手を出しそうになる。
〈右〉佐藤克久
床の上に出現するカラフルなオブジェたち。可愛い。
しかし、一番の目玉はコレでしょう。
中谷芙二子《Fog sculpture #47636 "風の記憶"》
30分に1度、美術館2階の庭園で展開される「霧の彫刻」。
その時の温度や風向きによって刻々と動きを変える霧の動きは、自然の手による彫刻だというわけだ。先日、愛トリ納屋橋会場で見た名和晃平《foam》にも似て、スケールの大きさに圧倒される。ただ、この大きく変化しやすい塊を、屋外であえて自然にまかせるまま展開するのか、人工的に管理された室内で、物体(泡と泡の発生装置)そのものの自律性に頼って展開するのかでは、だいぶ意味が違ってくるのだろうなと感じた。
全体として、タイトルに違わず、非常に軽やかな印象を受けた。意表を突く発想やとらえどころのないものを展示対象にしているところが面白く、かといって愛トリのように社会的な主義主張が強く出ているわけではないので、そっちの意味でも軽く素直に楽しめる。
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