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びおら弾きの微妙にズレた日々

空想世界を支える屋台骨


友人を誘って、豊田市美術館で開催中の「ジブリの立体建造物」展、「杉戸洋――こっぱとあまつぶ」展を見てきた。どちらも見応えたっぷり、美術館そのものの美しさは相変わらずで、しっかり癒やされてきた。また、初めて館内のレストラン「七州」に入り、お値打ちなランチを楽しみつつ、風景の素晴らしさを堪能することもできた。

    
駅から美術館まで歩いて10分、距離にしておよそ800メートル。
迷子にならないよう、ところどころに道案内が!


〈ジブリの立体建造物〉
土日祝日は2~3時間待ちになるというジブリ展。平日の午前中に出かけたら、一時間以内に入れたし、お昼前後はほとんど行列はなく、待たずに入れたようだ。構成としては作品ごとに小部屋を設け、あたかも巨大な家の中を部屋から部屋へと巡るような感じで展覧してゆく。いかにもジブリ作品の不思議世界に放り込まれた雰囲気が出て、面白いと思ったけれども、入場者が多すぎて渋滞の原因にもなってしまったのが残念。監視員を兼ねた誘導係が「順番にこだわらず空いているスペースへ自由に移動して下さい」とたびたび案内していたが、満員電車のようなありさまで、なかなか身動きがとれなかった。

場内案内図


しかし、内容は良い。当たり前だがとても良い。なんだかんだ言われつつも、ジブリ作品が一定の人気を保っている理由がわかる。建造物は作品を見ている時にはあまり意識に上らないけれども、物語世界を包む箱のようなものでり、同時に象徴でもある。そこにウソが混じったり弱さがあれば、中で展開されている物語までウソっぽく見えてしまう。実は重要。

作品の時代背景に合わせて建造物の詳細なリサーチと考証を積み重ねるのは、現代のアニメ作品なら必須の作業であり、ジブリ作品でも当然きっちりと行われている。すごいのは、既存のものを混ぜて崩し、新しい何かを構築する手腕。異世界を異世界らしく表現するために、いろんな時代や場所の建物を寄せ集め、リアル世界には存在しないが、あり得たかもしれないキメラを作ってしまう。その最たる建物が、「千と千尋の神隠し」に登場する「油屋」だろう。(なんなら「ハウルと動く城」の「城」でもいいが、あれは原作からして設定がクレイジーなのでジブリのオリジナルとは言えない)。会場の中央近くに堂々とそびえる「油屋」のレプリカが放つ異様な存在感は、宮崎ワールドを良く体現している。人が多かったので一周したところで次の部屋へ移動したが、本当はじっくり見ながら三周くらい回りたかった。

最後にたどりついたのは物販コーナー。あざといなあコノヤロウと心のなかで毒づきながらも懐かしいジブリ作品の誘惑には勝てず、ついつい絵はがきやらクリアファイルやら買ってしまった。ラピュタとかトトロとかハウルとか……。ナウシカは原作コミックを持っているから新たにグッズを買い足す必要はなし。


〈杉戸洋――こっぱとあまつぶ〉
こちらは、観覧者がぐっと減って落ち着いた雰囲気で鑑賞できた。というか、むしろこの落ち着いた空間が本来の雰囲気。ただし、展覧順序が普段とは逆向きになっていて、いつもなら最初の展示室となる吹き抜けの大きな部屋が最後に来るような順路になっていて、先に巨大作品群を見下ろし「あれは何だろう?」と期待しつつ、最後にたどりつく。新鮮な気持ちで会場をまわった。友人は、2階の回廊から見渡せる豊田市街の景色に感動していた。


展示スペースは「こっぱ」エリアと「あまつぶ」エリアに別れ、前者では絵画作品が、後者では主として立体作品が展示されていた。
とても抽象的な作品の数々だが、淡く優しい色使いにほっとする。とくに、あれだけ形にこだわった情報の集積体のようなジブリの建造物を見た後では、何かが形をなす前の世界、意味が言葉に変換される以前のぼんやりした世界が心地よく感じられる。
立体作品は背の高いもの、巨大なものが多くて圧倒された。圧倒されながらも細部のちょっとした変化に面白さを感じたり、長い長い鉄骨の先にふわりと乗せられたワタの塊を見ては、刻々と形を変える雲に思いを馳せたり(雲は「あまつぶ」の母体ですから!)、心が遠く懐かしい世界へとんでゆくような不思議な感覚を楽しんだ。

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