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びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

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ブリューゲル展おかわり

最高気温37度と予想された酷暑の連休最終日、いそいそと豊田市美術館へ出かけた。その日はブリューゲル展の最終日であり、また「聴覚の寓意」をモチーフとした古楽器による無料演奏会が開かれるからだ。

しかし。家のことをやっているうちに出遅れた。整理券配布時間前に到着したものの、駐車場は満車だし、ようやく美術館にたどりついた頃にはすでに長蛇の列ができており、定員を超えたため並ぶのは打ち切りだと……_| ̄|○ これだから事前予約のできない無料の演奏会は恐ろしい。

それはさておき、この日を最後に豊田市美術館は、改装のためおよそ10ヶ月にわたって休館する。現状の美術館は見納めなので、ゆっくり回ることにした。


まずはブリューゲル展の2周目。ただ見るだけでは面白くないので、音声ガイドを聞きながら回ることにしたら、これが大層面白い。石田彰演じる「ブリューゲル工房で働く名もなき画家」が一族の歴史やトリビアを語ってくれる。おかげで4代にわたるブリューゲルの画家たちそれぞれの持ち味や特徴がわかるし、なんと当時流行したバロック音楽の一節という、豪華なオマケまで入っていた。

ブリューゲル一族が活躍したのは、16中盤~17世紀。当時はオリジナルとコピーの差があまりなかったというか、「オリジナル」の価値が飛び抜けて高いわけではなかったようで、たとえば、ピーテル・ブリューゲル(工房の初代親方)の書いた〈鳥罠のある冬景色〉が人気を博すると、どんどん絵画工房の職人や息子たちによってコピーが作られ、売れていったという。コピーを作成するハウツーも出来上がっていて、効率よく同じ絵を生産できるようになっていたらしい。それはもちろん技術の伝承にも役立っているわけで、ブリューゲルの子孫たちは、工房の歴史を身体に染み込ませつつ、それぞれの個性を生かしていったというわけだ。当時の画家というのは、職人とアーティスト、両方の側面を備えた存在だったというのがよくわかる。(恐らくそれは同時代の音楽家にも当てはまる)

ちょうどブリューゲル展を見終わるころ、館内アナウンスで約15分後にギャラリートークがあると知る。改装前最後のテーマは、なんとバルテュス「白馬に乗った女曲芸師」だという。ギャラリートークというのは、ひとつの絵について、ボランティアガイドと鑑賞者がおよそ40分にわたって感想を述べ合うイベントだ。なんだか面白そうだなと思い、さっそくバルテュスの絵画絵の部屋で待機。待機中に隣の部屋に展示されているベーコンやエゴン・シーレ、ミロなど、おなじみの作家たちの作品を見る。ブリューゲル一族のどこまでもリアリティを追い求めた作品も「絵画」なら、色と線が画面いっぱいに踊るミロの作品も「絵画」。不思議だ。

ギャラリートークは、始まってみると、人によって意見や感想があっちに飛んだりこっちに飛んだり。なかなかガイドさんの誘導に沿って話が進まず、そこが面白い。ただ、共通していたのは「場違いな」あるいは「違和感のある」絵だということ。その理由が人それぞれなのだ。
少し離れた場所から見ていた自分としては、おとぎの世界にいた妖精(=白馬に乗った女曲芸師)が図らずもこちらの世界(荒廃した工事現場のような場所)に迷い込んでしまい、困惑しているふうに見えた。あるいはもう少し具象的に、思春期を迎え、美しいとは言えない現実世界に取り囲まれていることに気づいて不機嫌をあらわにしている少女。
ところが、トーク終了後に絵のごく近くまで寄って女曲芸師の顔を見ると、まるでヴィーナスだったのだ。遠目には少女に見えたし、体格はまったく少女なのだが顔つきは女神。バルテュスは少女崇拝者だったというから、これはやはり現代の神話的な絵なのだろうと思った。「女神、荒廃した現世に降り立つ」みたいな感じで。

ギャラリートークのあとは、炎天下に立ち並ぶマルシェを軽く見て回り、お昼ご飯になりそうなものを探す。ほとんど売り切れていた中で、かろうじて残っていたローストチキンセットをゲットする。これが美味いのなんのって。炭水化物は要りません。

最後に見ておきたかったのが、高橋節郎館。高橋節郎は漆作家で、漆工芸の技法を利用した絵画から立体作品まで、さまざまなタイプの作品を残している。漆といえば艷やかな黒が思い浮かぶけれども、その黒を宇宙に見立てて、金銀宝石で星々を表した作品は圧巻で、本物以上にリアルな宇宙と対峙しているような気持ちになる。化石をモチーフにした作品群は悠久の時を感じさせるし、どの作品を見ても、壮大な何者かの存在を強く思い起こさずにはいられない。
幸か不幸か、この別館はいつ来ても人は少なく、好きな作品を好きなだけ見ることができるし、庭を見渡す休憩スペースはとても落ち着く。
密かなお気に入りの場所で、時間に余裕のある時はできるだけ立ち寄ることにしていたのだが、これでしばしのお別れ。

最後の最後に、ショップへ寄る。コレ以上の散財はイカンと思いつつ、どうしても買ってしまうのね。というわけで、限りなく白地に近い祝祭管トートバッグに、ブリューゲルの花束缶バッジが新しくつきました。

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