豊田市美術で開催中のフェルメール展を見てきた。正確には「シュテーデル美術館所蔵 フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展」。
いやはや、夏休み中というのもあってかなりの人出。名古屋市内の美術館ほどの混みようではなかったが、親子連れだの、カップルだのでごったがえしていて「美術館で避暑」っぽい人が多かったな。
で、肝心のフェルメールによる作品は、チラシに載っている一点のみ。それでいいのだ。自分的にはあの時代の空気が知りたかったのだから。充分楽しめた。
17世紀のオランダ・フランドルの画家といえばレンブラントが一番有名だろうか。もちろん彼の他に同じ流派の画家がたくさんいて活躍していたわけで、貴族や富裕層の求めに応じてせっせと絵を描いていた。
彼らの絵の特徴はなんと言っても写実性にある。写真のようなリアルさだ。当時はまだ写真というものが存在しなかったのだからリアルさは重要だったのだろう。
実際、展示されたいくつもの絵を見てゆくと、宗教画にしても肖像画にしても、どれだけ本物らしく手に取れそうな質感を出せるか、その技術を競っていた空気を感じる。かの有名な「光の効果」を取り入れたのも、どれだけ対象物に存在感を与えられるか、を追求した結果だったように思える。
物事を本物らしく描く技術を手に入れた画家たちは、身の回りのあらゆることをキャンバス上に留めるようになったようだ。絵のモチーフは歴史や神話から抜けだして、一般人(といってもそれなりに地位と富を持つ)の肖像画へ、そして田舎から都市に至るまでのさまざまな風景、庶民の生活、静物画へと移った。記録できるものは何でも残しておこう、という精神だったのか。
しかし見たものをそのままキャンバスに移すだけでは芸がない。絵画は写真と違って「こうあって欲しい」という架空や理想の世界を勝手に作れるため、ありえない風景だろうが、依頼主の虚栄心だろうが何でもそれらしく見せることができたし、それが富裕層にとっては具合のいい調度品になるわけだ。この時代の絵画は、日常的に飾ってもらうための絵画であり、芸術家の自己表現欲がむき出しになっていない。そこが興味深い。
音楽の世界で言うと、まだオーディオの機器のなかった時代、オーストリアやドイツの貴族がお抱えの楽師に晩餐会用のBGMを作らせ、演奏させたのと似てるかもしれない。
PR
COMMENT
No Title
美術館の外、2階に落羽松(ラクウショウ)という樹木が並んでいます。私はその木が大好きで、木のあるその景色をよく見に行きます。
同じ2階にあるお抹茶をいただくところへもよく行きます。お抹茶と季節の和菓子で300円です。
話は変わりますが、私も読書メーカーに登録しました。
Re:No Title
フェルメール展も良かったですが、2階で展示されていた現代作品が面白かったです。遊び心をくすぐるヘンな作品がたくさんありましたよ。終わらないうちにぜひ。
落羽松>
そんな素敵な木があったとは。次回、美術館へ足を運ぶ時にはぜひ見てきたいと思います。お抹茶はちょっと苦手なので遠くから眺めるだけになりそうですが。
読書メーカー
asaさんも利用されていたんですね! さきほど、「お気に入り」に登録させていただきました。うちの本棚はコミックばかりでお恥ずかしい限りです。(*´∀`)