メイン会場は攻略した愛トリ、こんどはまちなか会場へ。今回のまちなか会場は、名古屋のディープタウンの一つである、円頓寺商店街&四間道。
名古屋城の西側にあって古くから賑わった地域だが、昭和の時代に繁栄したアーケード街の例にもれず、一度はシャッター街となった円頓寺商店街。今は再生プロジェクトが成功したアーケード街のひとつだという。
商店街に垂直に交わり堀川と並行して走る四間道は、古い商家や蔵がならび、歴史を感じさせる通りで、その昔防火対策として道幅を広く取り(四間≒7メートル半)、両側に火に強い蔵を並べたのだという。
おっと、右側の写真の標識はトリエンナーレ作品のひとつで、中国人作家、葛宇路(グゥ・ユルー)の作品《葛宇路》。どういうことかというと、この作家は自分の名前に「路」がついているのをこれ幸いと、名前のない道路に自分の名の標識を立ててしまった。するとグーグルに正式名称として認められてしまったという冗談のような本当の話。もちろん事情を知った中国当局は標識を撤去するのだが、その様子は一種のパフォーマンスとして撮影・記録されている。文字通り自分の体を張ったインスタレーション。
まずは、商店街から少し外れた古いビルの中で展示されている映像作品、キンチョメ《声枯れるまで》を見る。人生の途中で性転換をし、名前を変えた人たちへのインタビューだった。インタビューの内容そのものは興味深く見たけど、今流行りの題材感はぬぐえないと思いつつ、いよいよ商店街の中へ。
まちなか会場を回るのは、ちょっとした探検気分だ。地図を片手に、商店街やビル街の中に紛れ込んだ作品を探し出さなくてはいけない。そして、作品の展示場所を探しているうちに、その町ならではの、もっと面白い風景に出会うこともある。
(おそらく商店街の人が置いたのだろうが、なぜここに金のシャチホコがいるのかは不明)お寺の前のステージとその背景画(《MISSING PIECE》)、とうの昔に廃業した小料理店内での展示(《葛宇路》)、古民家内でのインスタレーション(那古野一丁目長屋内《円頓寺ミーティングルーム》、伊藤家住宅内《町蔵》《あなたは、その後彼らに会いに向こうに行っていたでしょう。》)など、地図を片手に展示場所を探して歩く。歩いているうちに、味のある店構えや建物、風景に気がついてそっちにカメラを向けている自分がいる。シャッター街になる前はもっと猥雑な街だったというが、今は若者向けの小洒落た店が並んでおり、それらの隙間に時の流れを感じさせる面白いものがある。
左:
鷲尾友公《MISSING PIECE》
右:梁志和(リョン・チーウォー)+黄志恒(サラ・ウォン)《円頓寺ミーティングルーム》
円頓寺会場の拠点である、なごのステーションにも寄る。ここでは参加型のプロジェクトが開催されていて、なんちゃって商品開発というか、新商品のアイデア出しをして用紙に書き留めておくことができる。これまでに書き溜められたアイデアをパラパラと見てみると、どこかで見たようなアイデアがいっぱい。もちろん思いつくだけでもすごいなあと思うが、真にユニークな何かを思いつくのは大変なことだ。
左:時の流れを感じさせる五条橋のたもと。たまらなく良い右:お店の名前が「JUFI」かと思ったらどうやら「DUFI」らしい。って、あのフランスの近代画家ラウル・デュフィのこと?! 堀川にかかる五条橋をちらりと見て、今度は反対側の端を目指して歩く。平日の昼間とあって、人通りはまばら。休憩で町を歩き回る愛トリボランティアさんたちの姿が目立つほど。でも夜になって飲み屋が開くともっと活気が出るのかもしれない。それに、タイミングが悪かったのか、音楽イベントにはまったく遭遇しなかった。
展示作品をほぼ制覇したところで(なんと!円頓寺会場には展示辞退の作品がなかった!)、小腹がすいたので、太陽堂という甘味処(本来はお餅屋さん)で一休みする。外見も内装も昔懐かしい学生のたまり場みたいな雰囲気で、みつ豆を注文したところ、新鮮なフルーツ盛り盛りの器が現れてびっくり! どう見ても値段と釣り合わない…。
まちなか会場は、空間と作品がいかに呼応し合うか、という点も大事だし、「お祭りやってます!」的な祝祭感を出すには地元との協力関係も欠かせない。そういう意味では正直ぎこちなさが感じられたのだが、ただし音楽ライブが始まってもう少し通り全体にパワーが溢れたときにどうなるのか、それが気になった。
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