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びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

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愛トリ2013 長者町編

フリーパスを購入して「ガンガン見まくる」心意気で望んでいるあいちトリエンナーレ2013。
第2回は娘の都合に合わせて9月17日。はい、展示施設が軒並み休館日となっている連休明けの火曜日です。
こんな時でも変わらず観客を受け付けてくれる長者町会場の懐の深さに乾杯。

Rigo23による壁画
ビルの外壁3面にペインティング
今回の愛トリの中でも最大級の作品では?


長者町会場は強烈な印象のインスタレーションが多い。マイアンテナにひっかかったものをいくつかご紹介。

①中部電力本町開閉所跡地
   →Nadegata Instant Party(中崎透、山城大督、野田智子)による《STUDIO TUBE》
一言で表すなら「なんちゃって撮影所」。もう一言付け足すなら「本気でバカをやる人々」。
閉鎖された中電の建物を、架空の特殊撮影スタジオ[STUDIO TUBE]だと見立て、それが惜しまれつつも閉鎖されるという設定でドキュメンタリーを作るとともに、このスタジオで製作された(ことになっている)8つの代表作の予告編的なムービーも制作して展示している。何がすごいかって、「なんちゃって」の規模の大きさもすごいが、それ以上に幻の予告編たちがもう、腹筋崩壊しそうなほど可笑しくて。戦隊物・歴史物・任侠もの・青春モノ・ホラーなどなど、いかにもありそうだけどあまりにキッチュな筋立ててで、見ているこっちの頭のネジがぶっ飛んだ。ごく一例を挙げれば、セミの鳴き声を電気エネルギーに変える思いつきとか、そのセミが実験の失敗で巨大化してお城の鯱の上で鳴いているとかもうね……(涙目)


②アートラボあいち「造形プロセッシング」
   →和田昌宏による《Stylish Flies for House Wives 》

これは映像がメインのインスタレーション。どこに惹かれたかって、スタイリッシュに主婦をこき下ろしているところだね。
ハエ人間が重力の向きがしょっちゅう入れ替わる不安定な狭いリビングで、せっせと粘土をこねている。彼が粘土の塊を大切にしているらしいことはわかるが、それが何か特定の形をなすことはない。これがシーン1。
シーン2は主婦へのインタビュー。彼女は某有名作家の作品と自分のパートナーの作品を比較し、前者はスタイリッシュだから部屋に置きたくなるが後者はそうでない、などと語る。途中で上空を飛ぶ飛行機の轟音が入り音声が聞き取れなくなる。でも英語の字幕が出るので彼女が何を語っているかはわかる。
しばらくするとシーン1とシーン2が合体したような状況になる。ハエ人間のいなくなった不安定で狭いリビングを映しつつ音声は主婦とそのパートナーとの会話をひたすら流す。内容は主に主婦の愚痴であり超訳すると「あんたは自分のことだけ考えて作品を作っていればいいんだからお気楽ね」「あたしも自分の時間が欲しいの。子どもや家族の世話に追われながら創作活動はムリ!」。パートナーのほうはのらりくらりと奥さんの愚痴をかわしつつ、辛抱強く付き合っている。リビングの中には隙間から無数の絵の具が侵入してきて、どろりどろりと血糊のような痕跡を描く。重力の向きが変わるたびに新しい血糊が増える。この修羅場にぴったりすぎる風景。
いやあ、子持ち主婦特有のイライラ感をこうやって作品にしますか、とひどく感心したのだった。


③吉田商事株式会社のギャラリーをはじめとするあちこちの街角
   →横山裕一による《あいちと世界地図の間》2013
現代美術と漫画という手法が結びつくとこんなにもシュールな作品が生まれるのだな、と驚いた。町中のビルの壁面にさりげなく漫画の一コマが書かれていたりするのだが、違和感なさ過ぎて見落とす。


④八木兵錦6号館
   →シュカルト(ドラガン・プロティッチ+ジョルジエ・バルマゾヴィッチ)による《インスタレーション》
セルビア在住の作家ユニットで、個人がいかに社会と関わってゆくか、そのチャンネルを芸術的表現に求めたり、あるいは伝統的な手芸作品に求めたりしている。例えば政治的な言葉を家庭に伝わる刺繍作品に乗せてみる。どこにでもある素材によって植物と一緒に移動できる装置をつくり、植物を慈しむ気持ちを呼び起こす。日常と政治はそれほど遠い関係ではないのだと言いたげ。

⑤八木兵丸の内8号館3F
   →ケーシー・ウォン《ドリフト・シティ》《鳥と魚のための尖閣諸島/釣魚島》
香港在住の作家で、パフォーマンス、デモ、インスタレーション等を通じて、中国の愛国教育に対する異議申し立てやアイ・ウェイウェイの解放運動などを行っているという。香港を拠点にしていることからも想像がつくように、進歩的な方の中国人。
彼は超高層ビルを擬人化したキャラクターを作り、彼が理想郷を求めて世界各地を旅しているという設定のもと、超高層ビルのきぐるみを着て、紫禁城、ピラミッド、シュレーダー邸など、世界各地の建築の名所を訪れては記念撮影をしている。これが《ドリフト・シティ》のシリーズ。
また、室内に軍事基地っぽくモニターをいくつも並べ、尖閣諸島の魚や鳥を始終監視しているという架空の監視所を作っているのが《鳥と魚のための尖閣諸島/釣魚島》。島の本来の住人は魚と鳥であり、人間なんてもともといないじゃないか、という強烈な皮肉が効いている。


いずれも社会/世界との関わり方に新しい視点をもたらしてくれるという意味で刺激的な展示作品の数々。今回もお腹いっぱい。

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