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びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

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昭和の香りとインスタレーション(あいちトリエンナーレ2016)

あいちトリエンナーレ2016@豊橋会場のレポートです。

先週の月曜日、友人と見にいくはずが、いったんキャンセルになり、昼時に娘と相談して、急遽午後から行くことになった。公共交通機関でも車を使っても片道約一時間半。無謀なスケジュールではあったが、後悔はしてない(汗)。

豊橋会場で回ったのは以下の場所
PLAT(穂の国とよはし芸術劇場)
 ▼
水上ビル
 ▼
はざまビル大場
 ▼
開発ビル
 ▼
(オマケ 駅ビルに併設されているショッピングセンター「カルミア」)




PLATでは、大巻 伸嗣の巨大な壺形の作品、コラムプロジェクト《鳥の歌-メッセンジャーの系譜学》などを鑑賞。
《鳥の歌》は、少ない展示数ではあったが、鳥が神話や伝承で引き受けている象徴性(境界を超える存在、現世と異界を結ぶ存在など)を思い、同時に押井守作品内でどのように扱われているかを知っていると、わくわくせざるを得ない。水上ビル内で展示されている、鳥のインスタレーションにもつながってくる。


水上ビルは、その昔、闇市の移転先として水路の上に建てられたビル群。1軒あたりの間口は狭く、一階は店舗、2階~屋上が住居として利用されていたようだ。現在の法律では水路の上に建築物をつくることはできないので、建て直しは不可能。静かに朽ちてゆきながら取り壊しを待つばかり。
その中の空き家店舗を利用したインスタレーションや展示が4件。
室内に鳥を100匹放したというラウラ・リマの作品は、廃屋が鳥に侵食された世界に見える瞬間があり、可愛らしさと恐ろしさが紙一重の空間となっている。


 
廃墟に蜘蛛の巣ではなく鳥の巣がかかってます


イグナス・クルングレヴィチュスの映像作品のインパクトがものすごく強い。強烈な音と光。特大のゴシック体で写しだされるシンプルなメッセージ。眼と耳がしびれる。

はざまビルでは、2件の展示。リビジウンガ・カルドーゾによる砂地に不時着した宇宙船ぽい何か+音のインスタレーションと、ウェンデリン・ファン・オルデンボルフの社会派的な映像作品。

最後の開発ビルは、9件といちばん展示数が多く、空間としても面白かった。1階には楽器店が入っていたり、カルチャーセンターがあったりする普通の商業ビルなのだが、トリエンナーレのために最上階のホールをはじめ、少なからぬスペースを提供してもらったようだ。最上階までエレベーターで上り、そこから階段を下りて下へ下へと順に展示部屋を迷路のようにたどる構成。ここも昭和の香り濃く、タイムスリップあるいは異世界へ飛んだかのような不思議な気分になる。三年前のトリエンナーレでも感じたが、こういう場所は実にインスタレーション作品と相性が良い。微妙に時空がズレている感覚が効いているのだろうか。


展示作品は映像を利用したインスタレーションが半数を占める。ドキュメンタリータッチのものから万華鏡のような作品まで、何が表現されているかは作家によってそれぞれだが、光や動画は現代のアーティストにとっては魅力的な素材だと思うし、鑑賞者にとっても比較的たやすく異世界に飛べる材料だ。
もともと、何を求めて現代美術を見るかといえば、世界を自分のとは違う色眼鏡で見てみたいとか(透明なメガネは存在しないという前提で)、理解不能と可能の境界線を探したかったりするからで、要するに好奇心を満たしたい。
そういう視点で見てみると、この中で特に興味深く感じたのは以下の作品だった。
◆ニコラス・ガラニンによる、衣装をモチーフにした作品。バイク用プロテクターを使って表現された正面壁の十字架は、まるでエヴァに登場する「アダム」だ。
◆佐々木 愛の、ロイヤルアイシングという手法で描かれた巨大な風景画。緻密で幾何学的な線に引き込まれる。
◆久門 剛史の、窓とカーテンと風が展示されているフロア。まるでルネ・マグリットの世界を立体空間に移し替えたような不思議さがある。
◆そして、東海道中膝栗毛を素材にとった、小林 耕平のなんとも珍妙な動画つき作品。これがもう本当に不条理な世界というか、架空の世界をリアル世界に持ちだした上で、大真面目な顔でバカバカしいこと(弥次&喜多の失敗を現代風に再現してみせる)をやるから腹筋が変なふうにねじれそう。それでいて観念と実体、常識と非常識、あり得るとあり得ないの境界はどこにあるのか本気で考えさせるので面白い。



トリ帝国の逆襲?!
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