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びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

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東欧の底力(チェコデザイン100年の旅)

桜が散り始めた春の一日は岡崎散策の旅。岡崎市美術博物館で「チェコデザイン100年の旅」鑑賞からの、岡崎公園散策、東岡崎駅近くのディープな喫茶店でおやつタイムを楽しんできた。



チェコデザイン展は、プラハ工芸美術館の収蔵品を中心とした展示で、いきなりミュシャから始まるという、ツカミはバッチリな構成。
その後、アール・ヌーヴォー→アール・デコ→キュビズムの影響→社会主義下でのデザイン→一時的品質低下からの回復→現代→子供向けおもちゃやアニメ作品の紹介という流れで進む。

工芸美術館の収蔵品ということで、絵画よりはポスターや本の装丁、食器や家具の展示が多く、小粒な展示品が多い印象だったが(願わくば、建築関係の資料がもう少しあればよかった)、各章の紹介文が秀逸でヨーロッパの歴史の流れとチェコ美術の流れが見事にシンクロしているのがよくわかった。やはりチェコでもパリ万国博覧会が節目となっているようで、そこへ出品して賞をとる、あるいは流行のスタイルを吸収して帰ってくるといった流れがあったようだ。

少し話がそれるが、19世紀末から20世紀初頭にかけて何度か開かれたパリ万博は、美術工芸品に大きなインパクトを与えた。その影響は日本にも及んでいるし(明治期に輸出産業として陶磁器の生産が盛んになったがそれはパリ万博で日本の作品が評価されたことが大きい)、またパリ国内においても、リモージュ食器のデザインの変遷が見事に美術の流行と一致しているなど、時代の流行を作っているのがわかって興味深い。

ヨーロッパ全体を席巻したアール・ヌーヴォーからアール・デコへの流れは東欧に渡ると、さらに独特な進化をとげたようだ。チェコスロバキアを始め、東欧はもともと豊穣な文化を持っているのだが、そこに流行のスタイルが流れ込むと両者がうまく作用しあって、いっそう魅力的な作品が生まれた感がある。特にキュビズムの影響を受けた幾何学的デザインと民族的なモチーフが合体した作品は、スタイリッシュなだけでなく温かみがあり、実に美しい食器セットや家具、工芸品となっている。

ところが2度の世界大戦の後、現代的な資本主義、さらには共産主義が追い打ちをかけるように入り込み、工芸品は大量生産向けのデザインへの転換を余儀なくされた。国営工場で低品質の生活用品が量産されるいっぽう、優れた工芸品は個人のアトリエの中で生き延び(国外へ亡命した作家も多かった)、1989年のビロード革命で共産主義が撤退してようやく息を吹き返したという。

現代は現代で、また新しい表現があるのだが、個人的には、アール・デコ時代の食器が大変気に入っている。

 お土産には幾何学模様を思わせる昭和モダンのタンブラー


さて、美術館のあとは岡崎公園のお城をたずね、あの有名な「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし…」という家康の遺訓の碑の前にたたずみ、少しだけ過去に思いを馳せてみた。



岡崎公園は「公園」とはいうものの、実質的には城跡。しかも山の上に建つ城なので、風光明媚で足腰を鍛えるための散策にはピッタリでも、のんびりレジャーシートを敷いてお弁当、という雰囲気ではない。むしろ、お城の他にも茶室、能楽堂、龍城神社、武士の館(展示施設)など見どころ盛りだくさんで、なんというか勤勉な人向け。さすが家康公生誕地。

最後の仕上げは昭和の薫り漂う、でもやっぱりどこか異世界な喫茶店「丘」で休憩。店構えもすごいが、店内の装飾がとてもユニーク。知る人ぞ知るマニアックなお店だそうで、珍スポット本でも紹介されている。三年前のトリエンナーレでは岡崎も会場になったが、その時もちゃんとトリエンナーレ仕様の装飾をしていたという。なぜあのときチェックしておかなかったのか、少々悔やまれる。

※店内のキラキラした装飾も個性的だが、個人的に一番気に入ったのが喫煙コーナーとそうでない場所をビニールカーテンで仕切ってあるところ。
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