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びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

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焼物を地味に愛でるなど(河井寛次郎展)

あいちトリエンナーレの合間をぬって、河井寛次郎展を見てきた。詳細はこちら→

とはいえ、もともと焼物作家に詳しくないので、河井寛次郎って誰? から始まる。

展覧会のチラシによれば、島根の安来市生まれ、京都を本拠地として陶芸作家のキャリアを始める。民藝運動と関わりつつ、日本の現代陶芸史の中で大きな存在感を持ちながら、人間国宝や文化勲章の推薦を断って生涯一陶工の立場を貫いた人。

作風を大きく分類すると、
初期:古代中国を手本にしつつ、工夫をこらした装飾的なもの
中期:民藝運動と出会い「用の美」にめざめ、シンプルな美しさをめざす
後期:シンプルかつ常識に縛られない自由闊達な造形

なかなか渋いじゃないですか。

会場となった瀬戸市美術館は、2階建ての小さな建物。展示室はそれぞれの階に2室ずつ、合計4室。そのスペースに130点近くの作品が並ぶので、見応えたっぷり。キャプションも充実している。
もともと寛次郎氏は、精力的に働く趣味=仕事の人だったらしく、非常に多作。作品を見ても、芸術家というよりは、芸術の域に踏み込んだ職人という手触りがした。
自分の作風について真剣に悩みはするが、人と会うことが好きで、何かに行き詰まっても精神のバランスを崩したりはしない健全さがある。
晩年の写真の印象は、好々爺風の職人だ。

その健全さは作品にもしっかり反映されていて、驚いたのはどの作品も造形がとても端正なこと。茶碗の丸みはひたすら均等で歪みがないし、凝った花入れや壷になども、どんなに珍奇な形をしていようが、簡単に倒れたりしない安定感を持っている。ここに至るまで、どれだけの土を捏ねて造形を重ねたのだろう。
この安定した土台の上に、研究を重ねた釉薬を使い、様々な技法で模様をつける。この模様が楽しい。恐らく次から次へとアイデアが湧いてきて、それらをひとつ残らず試したのではないかというぐらいバラエティに富んでいる。陶芸で「遊ぶ」という表現がぴったり来る。

「芸に於いて遊ぶ」というのは、「芸を極める」と同意だと、自分的には思っている。若いころ、バイオリンの名手と呼ばれる人の演奏を生で見たことがあるが、それがまさに音楽と「遊んでいる」風で、まるで子どもが夢中でオモチャをいじくりまわしているような体で超絶技巧を弾きこなすさまに、見ているこちらも感嘆しつつ、楽しさが伝染してきたことを思い出す。超絶技巧をこれみよがしに見せびらかしたり、「一生懸命練習しました」感がにじみ出ているようではまだまだなのだ。
河井寛次郎の作品も「遊ぶ」域まで達しているのだと感じた。数々の技術や研究は、つまるところ土や釉薬と真剣に戯れるために試されてきたのではないかとさえ思う。だから、例えばどんなに難しい技法が使われていたとしても、そこにある壷や花入れは、とてもさりげなく親しげな佇まいを持っている。そういった器は、見れば見るほど、恐らくは使えば使うほど魅力が増すのではないかと想像する。



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