お盆期間中に岐阜県現代陶芸美術館へ。「フランス印象派の陶磁器」展をたっぷり見学してきた。いやもう、美は正義です。
北斎の画からモチーフを借用した
《ルソー》シリーズによるテーブルセット
ブルーの縁取りがいい感じ
フランスの有名な陶磁器の産地といえば、王室御用達のセーヴルと真っ白な磁器で有名なリモージュ。今回焦点が当てられているのは、リモージュの製陶所の中でも随一の規模を誇るアビランド社が所有するコレクション。その中から主に19世紀後半のヒット商品や貴重なコレクションが展示されている。
流行に敏くあろうとしたアビランド社は、製陶所はリモージュに置きつつ、デザイン工房をパリに展開した。そこの現場監督、いや芸術監督がF.ブラックモンで、彼はヒット商品を次々と生み出した。
パリは今も昔も流行の最先端の街。当時流行っていたのはジャポニズムで、ブラックモンは北斎の漫画本を参考にしつつ、日本風のモチーフをどんどん食器のデザインに取り込んでいった。しかも、食器デザインの「お約束」をあえて破る斬新な形で。和の食器に描かれれば古色蒼然としてしまうモチーフも、ブラックモンの手にかかればエキゾチシズム漂う洒脱なデザインに。
もう一つのハイライトが「バルボティーヌ」技法による絵付け。これは泥漿(でいしょう/泥水みたいな粘土)に酸化金属を混ぜ、絵の具みたいにしたものを使って絵付けをする技法。釉薬とは少し違う。この酸化金属入り泥漿を使うと、印象派のような絵画を皿や花瓶に描くことができる。第一回印象派展が1874年。バルボティーヌ技法で製品が作れらたのが(アビランド社の場合)主に1876年-83年。アビランド社、仕事が早いです。真面目な話、陶磁器の世界と美術界の動向がほとんど一致していて、当時、陶磁器の食器セットを購入するような中上流層は、芸術の動きにもアンテナを張っている層だったことがよくわかる。
バルボティーヌ 風景人物図飾皿
皿がキャンバスになったかのような描き込みぶり。
いやはや、ヨーロッパにおいて陶磁器というのは、お金持ちと上流階級のみが持つことを許された贅沢品だった、という事実をひしひしと感じた展覧会だった。日本の場合、陶磁器は「焼き物」とか「瀬戸物」と気軽に呼ばれることからわかるように、どちらかと言うと日用品のイメージが強いんだけどね。
PR
COMMENT