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びおら弾きの微妙にズレた日々

あの時の感動をもう一度

この秋に乗った、愛知祝祭管弦楽団によるブルックナーの演奏会が、なんとCDとして一般発売される運びに!
噂では取扱店のタワーレコードで順調に予約数が伸びているとか。
こんな感じで紹介されてます→

さてさて、年の瀬も押し詰まった27日、演奏会DVDの完成に合わせてブルックナー鑑賞会が開かれた。とある音楽喫茶を借りきり、大画面・大音量で「あの時の感動よもう一度」を味わった。時期的に皆さん忙しいのか、20人程度の集まりだったけれども、指揮者の福島先生もわざわざ東京から駆けつけて下さった。
改めて聴けば、確かにアレな箇所はいくつかあるが、ライブ一発撮りであることを思うと、このくらいの傷はまだ少ないほうだと思うし、これから詳しく書くけれど、通常の演奏会ではあり得ないようなオマケの充実ぶりがひどい、いやスゴイ。
冒頭:ワーグナー「マイスタージンガー」
オペラチックにも程がある、というぐらいたっぷりとしたテンポで歌いながらすすむ序曲。すでにお腹いっぱいな演奏だが、最後に壮大なオマケがつく。合唱隊によるフラッシュモブで、舞台後方P席に何気なく座っていた聴衆が、曲が終わる直前に立ち上がり、序曲の続きを歌い出す。これがまた高品位な合唱で、私など、舞台の上ですっかり聞き惚れていた。

真ん中は軽めに:バッハ「2つのバイオリンのための協奏曲」
二曲目は、バッハ。タイトルは知らなくても、どこかで聞いたことがあるクラシック曲のひとつだと思う。今どきはバロック曲といえばピリオド奏法が主流なのだが、今回は思い切りロマンチックな演奏。
観客として聞いてみると、まず、伴奏の弦楽器(特に低弦)が分厚すぎて、おお? となる。が、ソリストは全然負けていなくて、アグレッシブに音楽をすすめてゆくので、バロックの皮を被ったロマン派にしか聞こえず、これはこれでとても面白い演奏になっている。また、チェンバロがいい仕事をしていて、まるでウェハースの間にはさまっているクリームのように、ソリストとオーケストラをうまくくっつけてくれている。
さらに3楽章にヘルメスベルガーによるカデンツァが挟まり、より劇的な音楽に。このカデンツァは、実は楽譜がなくて、音源から採譜しなくてはならなかったという。が、非常に美しいカデンツァで、それだけの労力をかけて演奏するだけの価値はあると思う。

真打ちがやってきた:ブルックナー「交響曲第8番」
これはもう、いったい何が起きたんだか? という不思議な演奏。演奏者は口をそろえて「長かったけど全然長く感じなかった」という。自分もそうだった。流れにのって弾いているうち、いつの間にかコーダにたどり着いていた。しんどさでいえば、40分しかかからないブラームスの4番とか3番のほうがよほどつらい。
さてこれを、鑑賞会というかたちで、完全に第三者として聞いたら、どんなふうに聞こえるのか。本当にくどくないのだろうか。退屈しないのだろうか。期待半分で聞いてみる。
1楽章はまだ全員が流れがつかめていなくて、いまひとつバラけがちだけども、悪くないし音が濃い。ちょっとくどいかなと思ったが、真面目に不真面目をやっている2楽章でうまく中和され、3楽章になると、完全にオケ全体の呼吸が整い、それまでとは空気が変わった。神聖な何かが降りてきたとしか思えない世界が広がって唖然とする。まさに「神との邂逅」にふさわしい音楽。神にまみえた歓びは4楽章で爆発し、冒頭の金管楽器の叫びとなる。そして大団円の雄大なコーダ。終わった後は「なにこれ凄いもの聴いちゃった」感が半端ない。

実は、ブルックナーを弾いている時、前半はなぜかどうでもいいことが気になって悶々と弾いていたのが、3楽章の嵐のように美しいアルペジオを乗り越えたあたりで、ふっと気持ちが楽になり、あとは音の流れにまかせて弾いていたのを思い出す。やはり何かが降りてきたんだろうなぁ。こんな演奏会は後にも先にもないような気がする。

それに次の本番はマーラーだから、降りてくるとしたら神ではなく、魔に属する何かだ、きっと。
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