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びおら弾きの微妙にズレた日々

どっちがメインだ? その1

昨日、愛知県芸術劇場コンサートホールで行われた「マーラープロジェクト名古屋管弦楽団演奏会」を聞いてきた。

曲目は次の通り。
第1部 マーラー 交響曲第4番ト長調「大いなる喜びへの賛歌」
第2部 ワーグナー 楽劇「トリスタンとイゾルデ」全3幕から抜粋
(詳細はサイトでどうぞ→http://www5.ocn.ne.jp/~wagner/601.html)

三時間弱の長大な演奏会だった。コース料理を2種類堪能したにも等しいボリューム。
マーラープロジェクトはアマチュアの団体だけども、よくぞこれだけの企画ができたものだと思う。マーラーはともかく、ワーグナーが前奏曲だけでなく抜粋ですよ? 歌手と合唱団つきで。
むしろ、アマチュアだからこその無謀な熱意がなせるわざかもしれない。
パンフレットも分厚く、その半分が解説で占められていた。トリスタンは抜粋部分の歌詞対訳つき。
チケット代の半分はこの充実したパンフレットのために払ったと考えてもいい。

出演者一覧を見たら、あれまぁ、見知った名前がいっぱい。現在活動しているNフィルの面々はもちろん、いつもお世話になっているVlaのトラさんとか、前にいたオケでいっしょにやっていた人とか。みんな頑張ってるなあ。
まずはマーラー4番から。

冒頭部分、印象的な鈴の音に誘われて現れた、弦の響きがとてもきれいで、「あ、こりゃいかんわ」と思った。15分もすれば強力な睡魔がやって来るだろうと。
時期的には夏休みの終盤で、精神的な疲れがたまっていて、そこへこの音楽だ。どんなに抗っても意識が飛ぶ。最初に沈没したのは2楽章の序盤、調弦を1音上げた、いわゆる「死神のバイオリン」に持ち替えたコンマスがソロを弾き始めたあたりだった…orz。熱演ぶりは伝わってきたというのに。

それから何度も目覚めたり気絶したりの繰り返しで、すごく勿体ない気がしつつ、救いは一楽章の人を食ったような再現部をきちんと聞けたこと。解説にあった通り「ちょっと待った! さっきまでの泥沼はなんだったの? てか、問題すべて先送りにしたでしょ」と唖然とするような展開部の終わりと再現部の始まりであり、一見端正で楽しげな曲想の中に5番のシンフォニーのテーマもちらりと顔をのぞかせるる。いかにもマーラーらしい箇所だ。荒れ狂うドロドロの内面をちらっと見せて置いて「さっきのは冗談だから」と端正な仮面を被ってしまい、その下であっかんべーをしているような音楽。この落差がまた魅力であったりもする。

もう一つの救いは、地上の生から天上の生へと移り変わる瞬間を捕らえられたこと。
この曲は、もともと「少年の魔法の角笛」という詩集の歌詞に基づいて作られたもの。その中に「浮世の生」と「天上の生」という歌があって、マーラーは最初、両方を曲に組み込むつもりだったらしい。最終的に「浮世の生」はカットされ、「天上の生」が歌付きの4楽章になった。(最初は4楽章だけ完成していて、もともとは3番のシンフォニーに組み込まれる予定だったのに入りきらなかったという)
とはいえ、この交響曲の基本は浮世と天上の対比にある。死神が踊ったりパロディにあふれている浮世の1〜3楽章と、「パロディなしで」とわざわざ指定されている、天上の美しさを歌う4楽章の対比。
浮世から天上に移る瞬間、音楽は一度死に絶え、新たに美しい旋律が始まる。死と復活の瞬間だ。
4番のキモとも言えるこの瞬間を、この目で見、耳で捕らえることができたのは、本当にラッキーだった。
実は、此岸から彼岸へ移るこのパターンは10番の1楽章で特に顕著なのだが、すでに4番で始まっていたのかと思うと感慨深い。

そして4楽章は、いい夢を見させてもらいました。すみません、ごめんなさい……(T.T)

トリスタンの感想は、これも濃く長くなりそうなので次回。

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