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びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

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ねじれたトライアングル

メンデルスゾーンとアンデルセン」というタイトルの本を読んだ。彼らは同時代の人間だったいうことを初めて知った。メンデルスゾーンは1809年生-1847年没、アンデルセンは1805年生-1875年没。同時代の芸術家にゲーテやシューマン、ブラームスなどがいる。



音楽家メンデルスゾーンと童話作家アンデルセン、活躍する分野も国籍も違うこの二人を結びつけたのは一人の女性。リンドというスゥエーデンのソプラノ歌手だった。

アンデルセン→リンド→メンデルスゾーン。
この3人のベクトルはこうだった。
アンデルセンはリンドにぞっこん惚れこんで、彼女が世界の舞台に立つチャンスを作ってやるだけでなく、度重なる拒絶をものともせず、果敢にアタックを繰り返す。彼女にとってアンデルセンは友人または兄であり、それ以外にはなりえなかったというのに。
一方、リンドは何のめぐり合わせか、妻子あるメンデルスゾーンに恋をしてしまい、世間では不倫の噂が流れるほどで、メンデルスゾーンは彼女の気持ちを理解すると同時に身を引いた。彼は良くも悪くも筋金入りのお坊ちゃまだったから、自分の気持ちはさておき、家庭を守ることを優先させたのだろう。
しかし、アンデルセンは二人の関係が辛くてたまらず、ある冬の夕暮れにメンデルスゾーンを訪れ(それはメンデルスゾーンにとっては最晩年にあたった)、リンドを決して不幸にしないと約束させるのである。
そしてメンデルスゾーンの死後、リンドは良き伴侶を得て、幸せな家庭を築いた。アンデルセンは一生独身のままだった。
という話。

この本を読んで一番大きな発見はメンデルスゾーンにまつわるあれこれ。
これまでただ優雅で貴族的な作曲家だと思っていたメンデルスゾーンだが、影の部分を持ち、音楽史上重要なことをいくつか行っていた。
まずはバッハの再発見。当時、バッハは「カビの生えた作曲家」と見なされていて、作品の数々は練習曲として使われていたらしい。しかし、メンデルスゾーンは残された楽譜を研究することでその真価に気づき、まわりを説得して演奏機会を作り、バッハの素晴らしさをアピールしていった。彼なくしては、今のバッハの評価はありえないという。
それから、現代的な「指揮者」というスタイルの確立。それまでは、指揮者は手で拍子をとり曲をまとめるだけで、コンサートマスターが指揮者を兼ねることも多かった。しかし、メンデルスゾーンは初めて指揮棒を使い、権限も広げて、曲の解釈、コンサートにおけるプログラムの決定まで行った。
それでもって、あの有名な「バイオリン協奏曲」をはじめ、「真夏の夜の夢」や交響曲第4番「イタリア」など作っているのだから、やはり天才だ。しかも、音楽家としては例外的にお金に困らない一生だった。
そう、確かに彼は紛れもない上流階級の人間だった。幼い頃から遊ぶ間もないほどに英才教育をほどこされ、各方面で才能を発揮し、文化人と交流する機会は山のようにあり、青年期には「グランドツアー」(貴族青年の修学旅行みたいなもので、教育の総仕上げとしてヨーロッパ各地を巡り、見聞を広げる)が行えたという身分だ。
そんな彼の人生に疵があるとすれば、彼がユダヤ人だったということ。19世紀のドイツではすでにユダヤ人を差別する動きがあり、彼は7歳の時にプロテスタントに改宗していたにもかかわらず、多くの場面で差別を受け、彼の作った曲は不当に貶められ、ヒトラー政権下では演奏禁止になった。唯一演奏されたバイオリン協奏曲は、作曲者名をふせて演奏されたという。
また、彼は38才という若さで他界してしまうが、その死因は謎が多いという。死の数年前からひどく体力が落ちてきて、これは精神的・肉体的なストレスが関わっているものの、それだけで片づけるには説得力に欠け、そして直接の死因はくも膜下出血と言われているが、それにしてはあるぺき症状が出ていなかったとか、不審な点は多いらしい。
でも、自分的には、メンデルスゾーンは周囲の期待に応えなくてはならないという「いい子の呪縛」を一生解くことができず、それで寿命を縮めたように気がしてならない。恵まれすぎたがために、哀しい人だったな、と思う。
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