某団長氏の指令で聞きに行くことになった、第450回 名フィル定期演奏会の感想です。
曲目はこちら。
メンデルスゾーン:交響曲第5番「宗教改革」
オルフ:世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」
ソプラノ:安井陽子、カウンターテナー:藤木大地、バリトン:トーマス・バウアー
合唱:グリーン・エコー、名古屋少年少女合唱団どちらも興味のある曲だが、どこまで楽しめるのか未知数な状態で金山の市民会館まで足を運んだ。
終演後は、あまりに音楽が楽しすぎて「ヒャッハー」な状態で家路につく(なんなら「頭の悪い人」の画像を思い浮かべてもらっても)。
前半の「宗教改革」は始めて聞く。メンデルスゾーンの曲は好きなのだが、これだけはなかなか聞く機会がなかった。
メンデルスゾーンがユダヤ人の家系に生まれたこと、のちに改宗したことは知っていたが、ルター派の信者だったとは始めて知った。
とても透明感があって、豊かな響きで申し分のないメンデルスゾーンだった。パルジファルにも使われている「ドレスデン・アーメン」の美しいこと! 最近お疲れ気味だった心身がすっかり癒やされた。
後半、真打ちの「カルミナ・ブラーナ」登場。合唱団と大量の打楽器が入り、がらりとステージの雰囲気が変わる。パンフレットといっしょに渡された、対訳つき歌詞集には「ページをめくる音にご配慮ください」との表記が。つまり、演奏中に見ていてよいということだ。情報量が多く、持ち帰りができるという意味では字幕より親切かもしれない。
前もってさらりと内容を確認しておき、演奏中、視線は原詩とステージの間を行ったり来たり。きちんと韻を踏んだ歌詞はリズミカルで、耳に心地よい。「初春に」「酒場で」「愛の誘い」の3部構成で、最初と最後に「おお、運命の女神(フォルトゥナ)よ」が置かれている。
原詩は、ドイツ南部の修道院で発見された「カルミナ・ブラーナ」という詩歌集の写本からとったもの。11~13世紀に書かれたといい、落ちこぼれ神学生の書いた詩や当時の流行歌が載っている。オルフはこの中から24の詩を選び出して曲をつけた。だから「世俗」カンタータ。
もう、題材からして面白い。
しかし、オルフのオーケストレーションときたら、とんでもない(ほめ言葉)。運命の女神をたたえる歌は、過激なまでに力強く、酒飲み万歳の説教はどんどん早口になって来る破滅を予感させ、こんがり焼かれた白鳥は運命にあざ笑われ、素朴に思える言葉の連なりから「えー! 実は乙女のビフォア&アフターだったの?」というドラマが生まれる。
言葉と言葉の間にはさまるメロディ、ちょっとした間や逆にたたみかけるようなテンポ、打楽器群による効果音、どんな歌詞をどのパート、あるいは歌手が担当するか。すべてが計算しつくされ、人間の喜怒哀楽がくっきりと表現されている。
これはマジで演劇だわ、と驚いて調べたら、本来は舞台形式によるカンタータであり、歌の内容を象徴するバレエ舞踊を伴う。
いやでも、今回の名フィルの演奏は、バレエがなくても充分なほどの表現力。歌手の方々の演技は見事だったし(特に、焼かれた白鳥と酒場の説教師!)、合唱団の迫力も充分。こんな芸術作品、見たことなかったし、「恋愛上等、酒最高!」な歌はやっぱり楽しい。前プロが神様をたたえる曲だっただけに、なおさら対比が鮮やかだった。
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