先日、ギドン・クレーメルの弾くバイオリンソナタが気に入ったという記事を書いたが、あれから次に手に入れたのがこれ→
ベートーヴェン:VN協奏曲アマゾンでのコメントによると、1楽章のカデンツァで何か大変なことが起きているらしい。それで興味を持ってとりあえずカートに入れたのが一ヶ月ほど前。
今週に入って、他の欲しい本をカートに入れた時に「CDと本を一緒に注文すると割引がある」というキャンペーンが目にとまり、それならと、クレーメルのCDと本を一緒に買った。
実は、その時勘違いしていて、買ったCDは、てっきりバッハの「無伴奏バイオリンのためのパルティータ」だと思っていた。注文がすんで、確認メールを見て間違いに気がつき、一瞬返品しようかと思った。
でも結果的には返品する必要は全然なかった。むしろ永久保存盤にしたいぐらい。
ベートーベンのVn協奏曲は、一昨年の演奏会で、ライナー・キュッヒル氏をソリストに迎えて弾いた。その時に一応聴き込んだはずなのだが、どうにも眠い曲だという印象がある。
ちなみに、その当時書いた音楽エッセイはこれ→
★今回、あたらめてクレーメルの演奏を聴いたら、そんな先入観は木っ端微塵にくだけてしまった。
特に1楽章が圧巻。テンポが早いだけでない。音が生きている。ソリストの音だけでなく、オケ全体の音がすべて生き生きとしていて、ベートーベンの力強さと包容力と豊かな音の流れを余すところなく伝えてくれる。
自分が期待していたのは、まさにこの音だった。眠気なんてとんでもない! 感激のあまり1楽章は長すぎると思う間もなく、終わりにさしかかろうとしていた。
すると、いきなりピアノの音が聞こえてくる。
おいおい、これはVnコンチェルトであって、Pコンじゃないだろうと慌てたその時、はっと思い出した。「ティンパニとピアノを加えたカデンツァも特筆すべき聴きもの」という帯のコメントを。
そうか、これが問題のカデンツァなのだ。
それはある意味現代音楽なのに、妙にベートーベンっぽい。
それに、ピアノが不自然でないのは、このVn協奏曲がのちにピアノ協奏曲として作曲者自らの手で編曲しなおされ、クレーメルはそのピアノ協奏曲のカデンツァを引っ張ってきているからなのだろう。しかし大胆な発想だ。
ただ、協奏曲におけるカデンツァというのは、本来ソリストの腕の見せ場で、ソリストが自由に技巧の限りを尽くした旋律を弾く、華麗なアドリブの場だった。(特にバロックの時代)
それが、時代が下るにつれて、作曲者があらかじめ楽譜を書いていたり、あるいは有名なソリストが作り出した旋律をそのまま踏襲するようになって、アドリブは消えてしまった。だから、今回のようなやり方は、むしろカデンツァの本来の意味に近いことをやっているわけだ。
現代一流のバイオリニストならではの試みだなぁ。
次は、やっぱりバッハの無伴奏パルティータを買おう。
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