先日、名フィルヴィオラセクション主催のコンサート、「VIOLISSIMO!」を聴きに行ってきた。
その名の通り、名古屋フィルハーモニー交響楽団のビオラ奏者による演奏会で、ビオラ以外の楽器は登場しない。びよら冗句的にはコンサート会場が阿鼻叫喚、といったところだろうが、実際は大変面白く豊かな音色を楽しめて、とても素敵な演奏会だった。
プログラムは次の通り。
G.テレマン/4本のヴィオラ協奏曲 第1番
M.ヴァインツィール/4つのヴィオラのための夜の小品
A.ピアソラ/フォー フォー タンゴ(Four for Tango)
H.ヴィラ=ロボス/ ブラジル風バッハ第1番
G.F.ヘンデル(吉田浩司版)/ 王宮の花火
M.ラヴェル(吉田浩司版)/ボレロ
(1人急病のため10人出演の予定が9人になり、これに伴って曲目の差し替えや編成の変更あり)
バロックと近現代曲の組み合わせのプログラム。耳に心地よいのはなんといってもバロック時代の売れっ子作曲家、テレマン。現代的で刺激満載なのがピアソラ。ピアソラのフォー・フォー・タンゴはノリがラテンぽいだけでなく、見ていても聴いていても楽しかった。ヒュッ、ヒュッ、とムチのような音を出すラティゴ、駒の外側を弾いてしまうチチャーラなど、タンゴ特有の奏法が使われていて面白かった。
ビオラばかりでモゴモゴした音色にならないのか、と素人は思いがちだけども、同じビオラでありながらヘンデルはちゃんとヘンデルっぽく聞こえるし、ヴィラ=ロボスはラテンのにおいがする。ボレロに至っては、ビオラ9本でどうやって色彩豊かなオケの音色を再現するのだろうかと思ったら、まったく心配無用だった。あの有名なメロディーをソロで順次弾きついでゆくのだが、弾き手によって音色がまったく変わってしまう。楽器の違い、弾き方の違い、感性の違い。そういったものがそれぞれ固有のビオラの音色を作って豊かな世界を紡ぎだす一方で、伴奏のストイックな音型は、誰に受け渡されても一糸乱れることなく、最後のコーダまでジリジリとパワーアップを続ける。びおら弾きのはしくれとしては、あまりの凄さにポカンと口を開けて聞き入るしかなかった。
あと特筆すべきは、高音域の豊かな音色。例えば1stビオラだと、7thくらいの高いポジションでガンガン主旋律が鳴らされていて、まるでバイオリンのように楽々と弾きこなしている姿に衝撃を受けた。素人がハイポジションに挑戦すると、蚊の鳴くような音または聞くに堪えない怪音波が発生するので「これは無理」と思っていたけれど、楽器が悪いのではなく腕が悪いだけだったんだな。
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