今、こんな本を読んでいる。
表紙の画像がなくて残念! それはそれは優美なストラディヴァリウスが写っているのに。
事典なので、バイオリンという楽器について、さまざまな角度から詳しく書かれている。楽器の構造や修理法が参考になるのはもちろん、ストラディヴァリやガルネリ一族など、過去の名匠について詳しく書かれているのが興味深い。
バイオリンの部品の説明で弦のコーナーを見ると、ガット弦(羊の腸を原料とした弦・耐久性に難はあるが音質は最高)の作り方が載っていた。それがなかなか血生臭い話で……(以下畳みます)
弦職人は、まず屠殺場で羊(できたら子羊)を買う。買ったらその場で小腸を取り出し、小腸の外膜と内側の膜を取り除いて中間部の繊維部分を取り出す。屠殺後、まだ内蔵が生暖かいうちに処理しないと品質が落ちるらしい。
取り出した繊維は仕事場に持ち帰り、ひと晩水につけて洗い、脱色処理などを施し、最終的には細く割いて糸状にする。それを何本も寄り合わせ、仕上げに油をひいて弦にする。
こうして出来上がった弦は音質こそ良いものの、すぐに切れたり劣化する上に値段が高いので、近世になって安価なナイロン弦やスチール弦が開発されるにつれ、生産量はぐっと少なくなった。
ちなみに現在のガット弦は外側が金属の細い糸で巻いてあり、耐久性は上がった。値段が高いのは相変わらずだが。(>_<)
うーん、ガット弦が羊の腸から出来ているとは知っていたが、具体的な手順がこんな風だったとは。
まだ温かいうちに腸を取り出すなぞ、著者いわく「勇気のいる行為だったにちがいない」とある。でもそれはたぶん違っていて、職人、とくに100年ぐらい前までの職人にとっては、ごく日常的な行為だったはずだ。弦の材料を取り出さずとも、家畜をしめてご馳走の準備をするのは、田舎ではよくあったことで、すると、まだ身体が温かいうちにさばくなんてことは当たり前だったわけだから。
つくづく現代の人間は命の生々しさから遠ざかってるなと実感。
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