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びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

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救済の網からこぼれ落ちそうになってギリギリ引っかかった話

タイトルが長いですが、一年越しのマーラー交響曲第3番を聞きに行った感想です。(本文も少しばかり長めです)


こちらの演奏会も例の感染症の影響で一年延期になったもの。今年も開催が危ぶまれたが、幸い愛知県はGWが終わる5月12日まで緊急事態宣言の対象地域にならず、開催中止の要請もなかったとのことで、無事に開演にこぎつけることができた。


まず「東海グスタフ・マーラー交響楽団」て聞いたことがないんですけど?という人向けに説明しておくと、これはマーラー3番を演奏するために結成された即席オーケストラで、2015年にウィーンのムジークフェラインで同じくマーラー交響曲第2番「復活」を演奏したメンバーが主体となっており、さらにそのメンバーの多くが愛知祝祭管弦楽団に所属していたという縁で、結果的には愛知祝祭管のスピンオフオーケストラと言ってもよいくらいに主要メンバーが被っている楽団だ。その愛知祝祭管はというと、マーラーの最初期のカンタータ「嘆きの歌」や交響曲第2番の原型ともなった交響詩「葬礼」を演奏しているし、他にもマーラーの交響曲を経験済みのメンバーが多く、また、指揮者も愛知祝祭管がずっとお世話になっている三澤洋史先生で、どう考えてもハズレはなかろうという布陣。

それで、聞く方もちゃんと勉強をしていかなくては!と意気込んで資料を探した。そうしたら丁度よい解説動画があって、これがまた面白い。マーラー3番は演奏時間がおおよそ100分という交響曲にしては長い部類に入るが、こうして背景を知ると決して長いとは思えなくなる。



前の日はちゃんと早めに寝て、注意事項もちゃんと読んで(今回はクロークなし。差し入れも終演後の楽屋への出入りもなし)万全を期したつもりで演奏会にのぞんだ。

開演してオケのメンバーが次々に入場してくる。見覚えのある顔、懐かしい人達がたくさん。そして三澤先生が指揮台に立ち、最初のホルンが響き渡った。お、なんかワイルドに始まったなぁと感じてそれからがさあ大変。

マーラーのシンフォニーは形式には従っているものの、かなり自由でなおかつ複雑。さまざまな動機や主題が姿かたちを変え、あちこちに出現する。世俗と神聖なるものが交互に現れて、なんというか天才的な画家のアトリエは往々にしてとっ散らかっていたりするのだが、そんな感じ。
次第に自分の頭の中は雑念(ぶっちゃけ仕事上の心配事)で溢れはじめ、時おり管楽器群の圧倒的な強奏に吹き飛ばされそうになったりするのだが、肝心な美しい旋律があまり心に届いてこない。視線はきちんと舞台を見て誰が何をしているかチェックしつつ、どうしても気が散ってしまうのだ。これは自分の心の状態の問題だから、演奏の善し悪しとは関係ない。

もちろん、ポストホルンの演奏が超人的だったとか、弦楽器のソロが神がかっていたとか、ダブルティンパニの息がピッタリ合っていたとか、どこが見事だったかはちゃんとチェックできているし、三輪先生の魂を持っていかれそうな歌声、天使そのもののような児童合唱団と女性合唱の声もよく覚えている。

ところが奇妙なことに、救済のメロディの一番いいところが頭に入ってこなくて、気がつけばコーダの部分で「えぇ?もう終わり?ちょっとまって、まだ救われてないのに」と感じたことを記しておく。

では自分にとって残念な演奏会だったかというと、それも違う。

生の演奏会は配信と違い、体験の質を考えるとき、演奏以外の諸々の要素の影響が大きい。例えば、演奏会に足を運ぶ前の準備――チケットの入手とか仕事の休みが取れるようにする手配、演奏会場の雰囲気、解説パンフレット、会場で顔を合わせる知り合いや友人の有無、それから演奏に出る人たちの思い(FBなどのSNSにあふれている)などなど。それこそマーラーのシンフォニーではないが、さまざまな情報が混じり合ってひとつの体験となる。

そういう意味ではやはり特別な演奏会だったと思うのだ。

コンマスによるパンフレットの解説が、熱量はいつもと同じながらスタイルが変わっていて面白いなと感じたこと。
パイプオルガンを挟むようにして2階席に展開された合唱団とソリストの配置が大変美しかったこと。まさに天使と女神。
いっしょに「神々の黄昏」を弾き通した人たちと再会できたこと。皆さんそれぞれ事情があって簡単には集まれないはずなのに、この演奏会が結節点になったみたいで、自分も結構な無理をして聞きに来る時間を作ったのだが、無理してよかった。
何より一年延期しているので、聞く方も演奏する方も「今度こそは!」という思いが強かった。体調不良をおして本番に挑んだコンマスをはじめ、演奏者生命をかけてまで挑みたいと思う人たちがいて、彼らの上に神的な何かが降りてきた。(実はコンマス名物のHUPの高さがいつもより低いなあとは思っていたのだ。それからソロの音色がいつもと違って不思議な透明感と深みがあるように聞こえた)

そんなわけで、演奏会が終わった後も神的な何者かの面影を求めて、マーラー3番を何度も聞いている。

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