いくつもの幸運が重なって、ヴィオラ・ダ・ガンバの演奏会(しかも間近で聞ける)を聞きに行くことができた。
10年くらい前に、びおらのご先祖様を探索していて、ヴィオラ・ダ・ガンバをはじめとする古楽器群に遭遇し、それからというもの、見た目も弾き方も全然違う楽器なのにすっかり魅せられ、機会があれば演奏会を聞きたいと思い続けきたところ、ようやくチャンスに恵まれた。
場所は入鹿池河畔の「入鹿の里MUSICA」。宿泊&研修のできる施設で、この演奏会はヴィオラ・ダ・ガンバ演奏者向け夏期講習会の一環として開催され、主に講習会参加者向けだけど、一般公開もしていますよ、というもの。
なので、かしこまった演奏会ではなく、施設の広間で、バイプ椅子の座席で、すぐ間近で(←ココ重要)講師の方々が弾く音を堪能できた。
もうガン見ですよ。
楽器の構え方から、弦の押さえ方、弓の使い方、呼吸の合わせ方。
自分はガンバを弾くわけではないけれど、好奇心に導かれるまま、いろいろチェックした。
曲目はマラン・マレやクープランなど、定番の作曲家によるヴィオールのための組曲とか練習曲など。(細かい話ですが、「ヴィオラ・ダ・ガンバ」はイタリア語で、これがフランスに渡ると「ヴィオール」となります)耳を傾けるうちに、バロック時代のフランスに連れて行かれるような不思議な気分になりましたとも。
ロビーにヴィオール用の譜面が置いてあり、ちらりと見たところ、ネウマ譜とまではいかなくても、ふだん見慣れた五線譜とは毛色の違う譜面ヅラ。ト音記号の位置が違ったり、ハ音記号が普通に登場していたりして、内心で快哉をあげた(でも読めない)。
大掛かりなワークショップとあって、ロビーには楽器職人さんが出張しており、かたわらのローテーブルにはトレブル(小型のヴィオール。音域はビオラ+バイオリン)が展示されていた。貴重な(?)一般参加者ということで、特別に試し弾きをさせてもらった。
ヴィオラはさんざん弾いてきたが、ヴィオール属の楽器を触るのは生まれて初めて。弓の持ち方、楽器の構え方から教えてもらって、とりあえず開放弦の音は出せた。まあ、擦弦楽器であることには変わりないから音は出て当たり前なんだけど、擦弦楽器であること以外はなにもかもヴィオラと違って戸惑うことがたくさん。
まずチューニングが違う。バイオリン属が5度調弦なのに対し、ヴィオール属は4度調弦。ヴィオラでD線の右隣の弦はAの音だが、トレブルの場合だとD線の隣はG。弦は6本あるので低い方から順にD→G→C→E→A→D(CとEの間だけ3度)。
実はギターも4度調弦で、チューニングは低い方からE→A→D→G→B→Eとなっている。残念ながらトレブルとはちょうど1音ずつズレているので、ギターで覚えた運指が流用できず残念。
弓もバイオリン属の弓とは作りが微妙に違うし、持ち方が逆(アンダーハンド)なので、力の入れ具合も全然違えば、弓道を通すのもひと苦労。でも、弓の毛を中指と薬指で挟む持ち方、いかにも優雅でカッコいいんだよねぇ。
最大の違いが構え。ヴィオール属はすべて縦置きで、サイズはびおらとあまり変わらないトレブルでも、膝の間に挟んで支える。ところが着ていった服の素材が滑りやすくて、なかなか安定しない。なのでよけいに弓がふらふらする。最初はアルペジオのひとつでも弾けたらいいなと思っていたが、弓が安定しないのでそれどころではなかった。小耳にはさんだところ、トレブル用にすべり止めの布があるらしい。なるほど。
大変楽しい体験だった。
ちなみに、お値段はどのくらいかと思って、ちらりとトレブルの弓を見たら、自分が使っているびおらの弓の2倍のお値段。本体の値段も2倍かなあ、などと思いつつ、さすがにそれは聞けずに帰ってきたのだった。
PR
COMMENT