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びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

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音楽って自由なんだと再認識した日

この春からずっと忙しくて、演奏会に出るのに手一杯で、演奏会を聴きに行く、ということができずにいた。秋が近づくにつれ、少しずつ時間と気持ちにゆとりが生まれ、先日は、ようやく名フィル定期に足を運ぶことができた。今期の定期演奏会のテーマは「文豪シリーズ」。調べてみればおいしいプログラム目白押し。

9月定期のテーマは「不安の時代」。イギリス生まれの作家 W.H.オーデンが1947年に「不安の時代」という長編詩を出版し、ピューリッツァー賞を受賞したが、バーンスタインはこの詩に触発されて「交響曲第二番」を作曲した。この曲がメインとなる。前プロは同じくバーンスタインの、政治的序曲「スラヴァ!」、そして有名すぎるウエストサイドストーリーより「シンフォニック・ダンス」。

指揮者は今をときめく川瀬賢太郎、ピアニストはやはり大人気の小曽根真。どうしたって期待は膨らむ膨らむ。




先にお断りしておくと、「不安の時代」は、行きの地下鉄の中でせっせと予習したにもかかわらず、途中で意識が遠のいてしまった(寝落ちした、とも言う)。日頃の疲れとか、前半があまりにぶっ飛びすぎて興奮した後だからとか、理由はいろいろあるが、音楽の中に鎮静作用を引き起こす何かがあったのでは、と強く思う。統制の取れたオケ、クリアな響きのピアノ――。

特に、第1部で、男女4人が人生の7つの時代、世界の7つの段階について語り合うところや、第2部で「昔は良かった」的な話をするところは、尽く睡魔に襲われる。ようやく目覚めてきたのが、真夜中のパーティが始まるあたりで、粋なピアノに救われた。続いて、朝が来て4人が解散してゆくときの音楽、これが一気に明るくなり救いを感じさせる音楽となったところで完全に覚醒。いちばんおいしいところはちゃんと聞けた! という不思議な体験だった。

自分にとっての白眉はなんといっても「シンフォニック・ダンス」。これがね、映画のシーンがいちいち鮮やかに蘇るのですよ。「マンボ!」て演奏してる人たちが叫ぶの最高だし。それに皆さん、指パッチンも上手い。マリアとトニーがお互い一目惚れしあうシーンは、もう胸がキュンキュンするし。
ウエストサイドストーリーは、ロミオとジュリエットを下敷きにしていると言われているし、実際その通りなんだけど、ただ、あのラストシーンを見ると、「英雄は死に、残された女性が世界を浄化する」みたいな流れが見えてきて、ワーグナーの「指輪」を思い出した。

政治的序曲「スラヴァ!」も面白かった。ロストロポーヴィチに捧げられた序曲なのだが、選挙シーズンのどんちゃん騒ぎを表しているかのような楽しい曲で、途中に選挙演説のコラージュが入る、というのが大変おもしろい。演説を楽曲の素材にしてしまうという発想はどこから? 
実はポップスの世界でもニュースの読み上げを取り込んだ曲がありまして、その一例がサイモン&ガーファンクル「7時のニュース」(1966年)だったりするわけで、時代に合わせた新しい試みがあるのだなあと感じ入った。

というか、ジャンルを問わず、音楽は自由なのだ、ということを思い知らされた楽曲だった。
管弦楽というメディアはつい半世紀前までは、最先端の音楽を担っていたことを思い出した。バッハ、ベートーベン、ベルリオーズ、ワーグナー、マーラー、……etc. みんな当時は最先端すぎる音楽で、聴衆の理解を得るのに時間がかかっていたからね。

で、演奏会に話を戻すと、本当に美味しかったのは、アンコールだった。

川瀬賢太郎氏いわく「舞台の上で演奏している人だけ『マンボ!』て叫ぶの、ズルいと思ったことありませんか?」→笑い→会場の皆さんでどうぞ(歓声)→その前にお手本を→名フィルメンバーに引き続き、なぜかチューバ氏がソロ指名を受け、さらにはステージスタッフまで「マンボ!」と叫ぶ事態に→では客席のみなさんもどうぞ→せっかくなので小曽根さんのピアノ入りバージョンで(会場どよめく)→アンコールGO

もちろん、ピアノ+クラリネットによる、普通(?)のアンコールもあったが、どちらも大変素晴らしかった。

最後にもうひとつ。名フィル定期では、開演前にロビーコンサートが開かれるのだが、今回はビオラチームによる「ボレロ」。ひとつのテーマを延々繰り返す、あの「ボレロ」。ビオラばかりでいったいどうなるんだ? という疑問はまったく無意味だった。むしろ面白い。ソロの部分では奏者それぞれの個性が目立ち、また、曲が少しずつ盛り上がり、音量も熱量も増えていく中、ボウイングがどう変化していくかを見るのも大変勉強になる。いいなあ、あれ、自分たちでもやってみたい(かなりの高確率で迷子になるだろうけど)。

最初の一口から最後の一滴まで美味しい演奏会だった。


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