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びおら弾きの微妙にズレた日々(再)

音楽・アート(たまにアニメ)に関わる由無し事を地層のように積み上げてきたブログです。

   

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びおら弾きの哀愁 その1

ビオラという楽器は、同じバイオリン族のバイオリンやチェロに比べると、知名度も音質もマイナーである。それを知っていてなぜビオラを選んだのだろう。その謎を解き明かすべく、ビオラについて自分なりに思うところを書いてみようとしたら……どんどん長くなる長くなる。ということで、3回に分けて書いてみることにした。もし興味をひかれたら、最後までお付き合いいただけると嬉しい。

大学のオーケストラ部で初めてビオラに触れたとき、なんとなく気に入った。先輩から伴奏が中心の楽器と聞いてひどく心をひかれた。おそらくその下地にあるのは、合唱での経験に違いない。

もともと声の質がアルトに向いているらしく、小学生の時から合唱ではアルト一筋だった。つまり、ずーっとメロディパートの下支えをしていたわけで、メロディを支える伴奏の重要さと面白さはよく知っていた。

そして実際オーケストラの中でビオラを弾いてみてわかったことだが、ビオラパートをうまくこなすには、オーケストラ全体に耳を向けていなければならない。逆に言えばビオラがこなせるということは、オーケストラがわかっていることでもある。なかなか奧の深い楽器である。

さて、「ビオラ」とは、いったいどのような楽器だろうか。とても大ざっぱな説明では「バイオリンより一回り大きくて音が少し低い楽器」。やや斜に構えた言い方をすれば、上と下からの圧力に耐えなければならない3人兄弟の真ん中である。

ご想像の通り、バイオリンもビオラもご先祖様は同じで、バロック時代の「ビオラ・ダ・ブラッチオ」(←腕にのせて弾く弦楽器の意)である。これが分化して、高音域を受け持ち、華やかな音を奏でるバイオリンと、中音域を受け持ち、アンサンブルに向いているビオラになったらしい。ちなみにチェロのご先祖様は「ビオラ・ダ・ガンバ」という縦置きにして足で挟んで弾く弦楽器である。

調弦は、低い方からC(ド)G(ソ)D(レ)A(ラ)。 チェロと同じ調弦である。(ただし一オクターブ高い)そして抱え方はバイオリンと同じく左肩とあごではさむ。まさにバイオリンとチェロを足して2で割ったような感がある。(しかし、名前的にはビオラが一番由緒正しい)

もっとも、以上の二点はあくまで外見上の話であるから、ビオラ弾きにとっては大したストレスにならない。何が大変かというと、合奏中に各パート間で生じる大小の食い違いにどう対処するかである。

ビオラの楽曲の中での役割は、基本的にメロディの補佐である。和音を作ったり、リズムを刻んだりして各パートの音のすき間を埋めたり、バランスをとったり、時にはメトロノームの代役になったりする。

オーケストラ全体がうまく調和して曲が進んでいる間はいい。しかし、よくあることだが複数のパートで微妙にテンポが食い違ってくると、その間に立ってリズムを刻んでいるビオラはどっちについたらいいのか結構困る。メロディラインにつけるのが基本ではあるが、必ずしもメロディが一つとは限らず、バイオリンとチェロ・バスにはさまれて右往左往することも少なくない。まるで中間管理職のよう。

少し話は変わり、作曲家によるビオラの扱い方には、月とスッポンぐらいの差がある。

例えばシューベルトの「未完成交響曲」。おいしいメロディがバイオリンとチェロの間を言ったり来たりするのを、リズムを刻み、和音を作りながら眺めていなければならない。そうでない時はアルペジオの嵐。もちろん、弾き慣れてメロディを聞く余裕があると楽しい。

これがワーグナーになると、なかなかあこぎな扱いを受ける。バイオリンが主題を奏でている裏で、小難しい高音域のアルペジオをやらされたり、(しかも、CDで聞いてもほとんど聞き取れない)ようやくメロディが弾けるかと思うと、金管楽器とユニゾンで、結果としてビオラの音がまったく聞こえなかったり。以前に「パルシファル」を演奏したとき、曲は好きだったが、ビオラのパート譜に泣かされた記憶がある。

逆にベートーベンはビオラを優遇していると思う。同じリズムを刻むのでも、曲の中での重要性が全然違う。それは合奏の時に弾いていて気持ちがよく、満足感が味わえるのでよくわかる。例えば「運命」の第2楽章では、チェロ・バスが主旋律を弾き、ビオラが和音を作りながらリズムを刻む場所があるが、メロディとハーモニーがあまりに美しく絡むので、そこを弾いているときは「ビオラでよかったよ~」と涙することしばしばである。もちろん、ベートーベンはビオラに限らず、すべての楽器を見事に使いこなしている巨匠であるが。

また、ブラームスもビオラの扱いはなかなかよい。主旋律でなくても、対旋律という形でバイオリンと張り合えるからである。交響曲第4番の第一楽章の冒頭など、バイオリンとビオラ-チェロの絡みは素晴らしいと思う。

ドボルザークは自身がビオラ弾きだったこともあって、なかなか悪くない待遇である。ただし、時おり伴奏と称して祭ばやしを弾かされるので要注意。交響曲8番の4楽章に、リズムもメロディラインもお祭りの太鼓そっくりの部分があるのだ……。日本人とスラブ人(注:ドボルザークはチェコスロバキアの出身である。念のため)は絶対どこかでつながっていると思う一瞬である。

……と、あれこれ言いたい放題だが、ひとつ言えるのは、優れた作曲家はビオラを使いこなせるということ。存在は地味だが、結構食えない楽器なのである。
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