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びおら弾きの微妙にズレた日々

びおら弾きの哀愁 その2

協奏曲やソナタについてもやはりマイナーなビオラである。
ビオラのための楽曲は、主にバロック時代と近代以降に集中しており、ベートーベンやブラームスが活躍したロマン派時代に作られたものはほとんどないのだ。
何故かと言えば、バロック時代にはビオラの先祖にあたるビオラ・ダ・ガンバやビオラ・ダ・ブラッチオなどが活躍していたので、それらの楽器のための協奏曲などもいくつか作られたというわけだ。

少し知られたところでは、テレマンのビオラ協奏曲、J.C.バッハ(←「音楽の父」ではない方のバッハ)のビオラ協奏曲、J.S.バッハのブランデンブルグ協奏曲第6番などがあり、また貴重なロマン派時代の曲でシューベルトのアルペジョーネソナタなどがある。

どうしてロマン派の作曲家はビオラ協奏曲やビオラソナタを作らなかったのだろう。大きな理由の一つにビオラの音質があると思われる。

こもりがちではっきりしない音だとか、高い音が全然響かなくて聞いていると喉がしめつけられそうになるなどかなりひどい言われ方をすることもあるが、実際にバイオリンに比べれば華がなく、チェロに比べると深みと迫力がが足りない。
実はこの音質、ビオラがビオラであるためには仕方がないともいえるのだ。

少し話がずれるが、どうしてバイオリンがサイズの割に大きな音が出るのだろうか。そのカギは非常にシンプルで、バイオリンに4本張られている弦のうち、指で押さえない状態で「ラ」の音が出る「A線」が胴の大きさとうまく共鳴するからだそうだ。

一方、ビオラはどうだろう。バイオリンより5度低い音を出すビオラは、計算上バイオリンの1.5倍サイズでないといけない。しかし、全長約60センチのバイオリンの1.5倍というと90センチ……。これだけ大きいとさすがに肩で支えるには無理がある。というわけで、実際には75センチ前後だったりする。つまり、構造上音の鳴りを犠牲にしているわけだ。チェロもビオラと同じ調弦だが、あの胴の大きさがあれば、それだけで音量はカバーできる。

ビオラの一番低いC線は、腕力があればそれなりに鳴るけれども、一番高いA線はいかんともしがたい。もともと鳴りの良くない胴を持つためか、力を入れれば入れるほど情けない音になってしまう。例えは悪いが、つい飛べない鳥を想像してしまう……。

また、バイオリンより太い弦を持つビオラは、音が立ちにくい。よほどしっかり弓で弦をとらえないとはっきりした音が出ない。もともと中音域は他の音に埋もれやすく、音が立ちにくいのもビオラの音色を地味にしている原因の一つであろう。

こうやっていろいろ考えると、やはり表に出るよりは、アンサンブルの中で和音やリズムを作る方が向いているのかもしれない。

ただし、この音色ゆえにビオラが好きだというビオラ弾きも少なくない。ものは考えようで、耳を刺激しない渋い音色は、温かい音色、微妙に深い音色と捕らえる事が出来る。
また、高音が響かないということは、それだけ耳にやさしいわけだ。ちなみにビオラの音域は人の声の音域と重なる。

以前、お遊びでバイオリンを弾いたことがあり、一番高いE線の音に驚いた覚えがある。こんなに頭にキンキン響く音を毎日聞いていて、耳は大丈夫なんだろうかと……。

やがて近代以降の作曲家がビオラの可能性に目をつけた。それまで独奏楽器としては注目されなかったのが幸いしてか、半ば実験的に、あるいはクラシック音楽の古い枠を破るかのようにビオラのための楽曲が作られた。
手元にビオラのためのエレジー(悲恋歌)を集めたCDがあるが、これは近代から現代の作曲家による作品ばかりである。

アマチュアが演奏するには困難な曲がほとんどだが、聞く分にはとても面白い。ビオラの高音域特有の鬱屈したようなもの悲しい音色は、バイオリンには決して出せないし、C線ならではの温かく深い音色も、チェロのそれとは違う特有の響きを持っている。

というわけで、O-bakeもビオラの音色にすっかり誘惑された一人である。
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