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びおら弾きの微妙にズレた日々

びおら弾きの哀愁 その3

ビオラ弾きはいかにしてビオラ弾きになるのだろう。
実は、子供用のビオラは存在しない。バイオリンについては、周知のように子供の身体の大きさに合わせて1/4サイズや1/2サイズなどを選べるようになっている。チェロにも子供用サイズがある。
ではどうするのかと言えば、ほとんどの場合、成長したバイオリン奏者がビオラに転向する。掛け持ちで弾く場合もある。(バイオリンとビオラが一緒に収納できる楽器ケースを見たことがある)
もちろん例外もあって、大人になってから弦楽器を学ぶ際にビオラを選択すれば、弾き方の基礎を最初からビオラで学べる(例えば学生オーケストラ)。そうすればこれから述べるような転向にともなう弊害はほとんどない……はずである。

バイオリンとビオラは、基本的な奏法が同じなので、バイオリンが上手ければビオラもすぐに弾きこなせるかというと、そうはいかない。楽器の大きさと音域の微妙な違いがやっかいな問題を引き起こすのだ。
まずピッチ(音程)。バイオリンよりも指板が若干長いため、指の間隔もそれなりに広げなければならない。うっかりバイオリンを弾いているつもりで弦を押さえると、間違いなく狂った音程が出る。
バイオリンとビオラを持ち替えるたびに指を広げる間隔まで完全に切り替えることができたら、上手なビオラ弾きと言えるが、そんなに器用な人間はまずいないらしい。
そして記譜の問題。音域的にバイオリンとチェロの間をゆくビオラは、ト音記号でもヘ音記号でもうまく記譜できない。上下どちらかの加線が多くなりすぎて、非常に読みづらい楽譜になってしまうのだ。
そこでビオラ専用にハ音記号なるものが登場する。これは五線譜のなかの真ん中の線をハ音(ド)と読ませる記号である。これを使えばほとんどの音が五線の中におさまる。ちなみに真ん中のドは、ト音記号で表示された場合、下の加線一本のドになる。
このハ音記号の楽譜は、慣れないとかなり読みにくい。ト音記号の表記と一音違いというのがなかなかの曲者だ。(つまり、ト音記号で読むとシである音がハ音記号ではドになるのだ)
ビオラの初心者がうっかり楽譜をト音記号で読んでしまって、一人だけ違う音を出していた、なんてことは日常茶飯事。
さらに悪いことに、ピッチのあいまいなビオラパートの中にいると、自分が間違ってト音記号読みをしていることに気がつかない。(だからジョークの標的にされるんだよね…)

このような何かと面倒の多いビオラに(しかも苦労の割に存在は地味)なぜバイオリンから転向してくる奏者がいるのだろう。
所属している楽団でビオラが足りないからどうしても変わって欲しいと頼まれたとか、バイオリンよりもビオラの音に魅力を感じるとか、曲の構成を勉強するためにビオラパートを弾いてみたい……などなどビオラを選ぶ理由はさまざまであろうが、やはりそれなりに覚悟がないと務まらない気がする。
こんなビオラ弾きの性格にはどうも共通項があるような気がしてならない。どう言い表したらいいのだろう。好んで日の当たらない道を歩きたがり、それを嘆きつつ誇りにも思う性格とでも言おうか。要するに少々屈折しているのである。
もちろん、これは個人的な経験と勘と一種の思いこみによるものだから、どこまで事実をついているかは相当怪しいが、賛同者が多いことを祈る。

ところで、楽器をネタにしたジョークの数では、ビオラが群を抜いている。しかも世界規模で発生しているらしい。これは喜ぶべきか悲しむべきか。
主なネタは上記の理由から来るピッチの悪さや楽譜の読み違えなどなど。かなりシニカルな皮肉もまじっており、当たりすぎて泣き笑いすることも多い。

わかりやすい例を一つ。
「短二度の音程とは?」
「二人のビオラ奏者が同時に同じ譜面を弾いたときに生じる音程の差」
(参考までに、短二度とはドとド♯の関係)

もう一個強烈なものを。
「世の中には2種類のビオラ弾きがいる。死んだビオラ弾きと下手なビオラ弾きである」

もっとジョークを見てみたい方はこちら。→びよら冗句
(ただし、クラシック関係の知識がないとオチが判らないもの多数)
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