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びおら弾きの微妙にズレた日々

走りつづけること~小田和正のファンとして

もう数年前の話になるが、小田和正のアルバム「LOOKING BACK2」を中古屋で買った。これはオフコース時代もふくむ過去の曲のカバー集である。
 買いたくても財布の中身を見てため息をつくばかりだったのが、いきなりに手の届くところに現れた。ラッキー! と喜ぶ反面、「これってそんなにつまらないアルバムか?!」みたいな思いもよぎって複雑な心境。なにしろ、新規のリリースからそんなに日にちがたっていないのだから。
 しかし、チャンスを逃したくないので買う。

 その夜聴いて見て、なぜこんなに早く手放されたのか、わかった気がした。アレンジが、ものすごく違っている。躍動感にあふれていて、オフコース時代独特のリリカルな響きがほとんど影をひそめている。

 最初にこのアルバムを手に入れた人が、もしオフコース時代からのファンで、このアルバムにも昔の響きを求めていたなら、見事に期待は裏切られたに違いない。「これ、違う! 私の好きな小田さんじゃないっ」と言って売りにゆく姿が目に浮かぶ……。

 時と共に人は、変わる。それを救いと感じる人もいれば、酷だと感じる人もいる。が、とにかく変化はある。人が変われば音も変わる。そして、小田和正という人は、一ヶ所にとどまり続けることを良しとしない。常に動き続けていなければ気が済まない人なのである。

 このことは、本人がかつてインタビュー本で語っているし(あいにく、現物は人に譲ってしまったので手元にない)、何より紡ぎ出される言葉はもちろん、メロディに如実に表れている。

 前へ、前へと転がるように進む小田さんのメロディ。種を解き明かせばシンコペーションの多用にあるのだけど、それ以前に彼独特の言葉のリズム感によるところが大きいように感じる。

 ところで、小田さんはとうに五十歳を過ぎている。なのに彼の作り出すサウンドはいっそうパワフルに、多重的になってゆく。新しくいろいろな人と出会っては彼らのパワーを分けてもらったかのように。いや、実際そうなのだと思う。

 昔の曲は、そのままでも充分いい。それでも、今の小田さんが表現したいようにアレンジをかけた古い曲も、やはり素敵なのだ。それはオフコースを解散した後も、自身のソロ活動や若いアーティストのプロデューサーとして、確実に走りつづけている彼の存在証明のようなもの。

 こうしてどんどん新しく変わりつづけようとする小田さんはいつになっても憧れの的。 変わりつづけること、走り続けることは、時として苦しい。安心できる場所で立ち止まっていたくなることも、少なからずある。
 若い頃は、そんな風に苦しくなると、小田さんの曲を聴いた。後ろを振り向くな、立ち止まるな、もし、立ち止まることがあっても、もう一度自分の力で動き出すまで待っているから、というメッセージを聴き取るために。
 今は、もう、そんなに彼の曲を聞くことはないけれど、もう聞く必要がないほど、彼の音楽と生き方は自分の心の奥底に沈んでいったにちがいない。おかげで今の自分がある。
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