8月3日のこと、朝、銀行へ行くために車を走らせていたら、ドボルザークの交響曲8番が聞こえてきた。
始めに3楽章のしっぽがちらりと聞こえてきた時点で「もしかして…」と思い、4楽章出だしのファンファーレで確定した。
この曲は、学生オケを卒団後、はじめてOBとしてエキストラに呼ばれた時に弾いた曲だった。
この時にビオラトップをやっていたのが相当に面白い子で、3楽章の最後にリズムと音の変わり目が微妙にややこしいところがあるのだが、そこに歌詞をつけて歌えるようにしてくれた。
どんな歌詞かというと…
「しろやぎさんからおてがみついたくろやぎさんたらよまずにたべた」
一度見たら忘れませんとも。
そんな他愛もないことを思い出しつつ、また、当時ファンファーレを吹いたトランペットの子は今頃どうしているんだろうとか、4楽章に聞き入っていたら驚いた。
中間部が泥臭くない! 少なくとも日本のまつり囃子調ではない。
どんどんひゃらら、と浮かれた雰囲気ではなく、ちょっと遅めのテンポでどっしりと進めている。
すると、新鮮な印象を受けるのだ。それまで西洋音楽のしきたりにのっとって進んできた曲の中に、東欧の民俗音楽が混じる。一歩間違えれば泥臭くなるところがエキゾチックな雰囲気に仕上がっている。そのモチーフがひとしきり展開されたあと、無理なく冒頭のテーマへと戻っていくあたり、この作曲家すごい、と思わされた。
ドボルザークは今でこそ交響曲の9番や8番が有名になって、交響曲に民俗音楽を取り入れた作曲家として有名だけど、もともとはそんなに泥臭い曲を書く人ではなかったようだ。
初期の4番などは、すごく透明感があって、「え、これがドボルザーク?」と驚くほどなのだ。
恐らく、彼はそれまでの西洋音楽に飽き足らなくなって、新しい刺激として民俗音楽を自分の曲に組み込む方向に進んだのではないか、そう考えると、いっそう9番や8番のシンフォニーが面白くなる。